企業による森づくりの歴史と変遷

公害問題をきっかけに企業の森づくりが胎動

製紙業界や木材業界といった本業に直接関係する業種の企業が、直接森づくり活動を行う取組は古くから見られましたが、本業以外の部分での企業による森づくり活動は、1970年代に公害問題が深刻化する中で胎動することになりました。

1980年代に入ると、企業が国有林等と契約を締結して「国民参加の森林づくり」に参加する取組が生まれました。また、1990年は「フィランソロピー元年」と言われたように、1990年代初頭の好況期は、ものの豊かさに加えた心の豊かさを求めて、企業によるメセナ活動やフィランソロフィー活動が広まりをみせました。さらに、1992年の「地球サミット」を契機に、世論の地球環境問題への注目が高まりをみせていました。

そして、これらの動きに対応する形で、国有林は1992年に「法人の森林」制度を創設し、森林の保全・整備や、従業員や顧客の森林とのふれあいの場としての活用するために、企業等と国有林が分収造林・育林契約を締結する取組をはじめした。その為、この制度を活用した社会貢献・環境貢献の活動としての企業による森づくり活動が、各地で広がりをみせるようになりました。

CSRの浸透で森林が持つ多面的機能が再評価

さらに、1990年代中盤になると、1995年の阪神・淡路大震災等を契機としてボランティア活動に対する社会的な認知を得られ、また同年に「緑の募金法」が成立する中で森林ボランティア活動も全国的に広がりをみせるようになりました。その様な潮流を受けて、「企業の森づくり」も、従業員やその家族が体験的な記念植樹のみに参加するだけでなく、実際の森林ボランティア活動にも参加する取組や、森林ボランティア団体等との連携・協働による取組なども広まり始まりました。

そして2000年代に入ると、企業の不祥事が相次いだことなどを背景に、欧米の企業を中心に発達してきた「企業の社会的責任(CSR)」の概念が、わが国でも企業経営の新しい取組として注目をあびるようになってきました。その中、「企業の森づくり」も、企業が経済・環境・社会等の幅広い分野における責任を果たすことにより、企業自身の持続的な発展を目指すというCSR活動の文脈から森林が有する多面的機能の重要性が再評価されるようになり、幅広い企業等の参画が進んできました。

2000年代には地球温暖化防止対策の重要性が一般化

2000年代中盤になると、頻繁に異常気象に見舞われるなどで地球温暖化防止対策の重要性が一般化するようになってきました。また、都道府県等を主体として「企業の森づくり」のサポート制度が各地で相次いで創設されたことも相まって、地球温暖化防止という観点から、幅広い業種・業態の企業の森づくり活動への参加が飛躍的に広がってきました。

さらに、地球温暖化防止という観点から、間伐材や国産材の利用を通した森林の保全・整備の推進や、木材利用を通した環境負荷の低減を目指すなどの観点から、CSR活動の一環としての「木づかい」の取組も広がりつつあります。

新たな商品・サービスの創出に貢献する取組も

近年では、既往の「企業の森づくり」に係る諸実践を下地としつつも、環境貢献・社会貢献としての取組の範疇を超えた取組も各地で芽生えています。産官学民の多様な主体との連携・協働を図った上で、企業が保有する人材、技術、情報、システム等といった多様な経営資源を活用することで、従来行政や林業業界の事業者によって提供されている森林資源や木材資源を活用した商品・サービスの付加価値を向上、新たな商品・サービスの創出に貢献する取組などが生まれています。

この様に、1990年代に広がりをみせてきた「企業の森づくり」活動は、地球規模の環境問題が顕在化し、CSR活動が広まりや深まりをみせる中で、この数年でも飛躍的な発展をみせています。
今後は、産官学民の多様な主体と連携・協働を通して、サスティナブルな循環型社会の形成に向けた、企業による幅広く創造的・発展的な森づくり活動の環が広がっていくことが期待されることでしょう。