MENU

企業の森づくり

事業事例

case
03
case 03

樹を育て未来を託す『みんなで育む明日への森』植樹プロジェクト

令和3年度林野庁委託事業「国民参加の森林づくり総合推進事業報告書」より

事業(活動)の内容・仕組み

樹を育て未来を託す「みんなで育む明日への森』植樹プロジェクトは、大和アセットマネジメント株式会社が 2021 年 7 月に始めた、ファンドへの投資活動を通じた植樹の取り組みである。
具体的な仕組みは、投資信託「脱炭素テクノロジー株式ファンド」の信託報酬の一部を原資として、ファンドの純資産総額に応じて寄付金額を算出し、それを認定特定非営利活動法人環境リレーションズ研究所の植樹プロジェクト「Present Tree」に寄付することを通じて、寄付 5,000 円あたり 1 本の割合で伐採跡地の植樹に取り組むというものだ。寄付は、大和アセットマネジメントと当該ファンドの販売会社のうち賛同する各社が行う。植樹・保育管理の様子をファンドレターで知らせたり、環境リレーションズ研究所から発行される植樹証明書を 500 万口以上を保有する投資家に対して発送したりすることで、ファンドへの投資とともに資産と森林の成長を継続的に見守ることをねらいとしている。

事業(活動)をはじめた背景・理由・経緯

本プロジェクトは、国内で初めて、ファンドとしてCO2排出量ゼロ(カーボンゼロ)をめざす「脱炭素テクノロジー株式ファンド」の取り組みの一環として開始。
脱炭素テクノロジー株式ファンドは、「日本を含む世界の株式等の中から、脱炭素社会の実現に向けたソリューションを提供する企業に投資し、信託財産の成長をめざす」ことを目的とするファンドである。
この実現のための具体的な取り組みは大きく 3 つある。

  1. エネルギーの効率的利用・エネルギーの転換・エネルギーの貯蔵といった観点でCO2排出量の削減につながる優れた技術を持つ企業を投資先として選定している
  2. 運用助言会社のスキームを活用して、二酸化炭素排出量の削減を目的としたグリーンプロジェクトに資金を拠出し、投資先の企業が排出するCO2量の相殺をはかり、ファンド全体でのCO2排出量が計算上0 になることをめざす
  3. 本プロジェクトによる植樹活動への寄付

植樹活動への寄付をこのファンドの取り組みとして行う背景には、投資家にファンドの保有価値を実感してもらうことで、短期的な投資ではなく長期投資の対象としてファンドを認識してもらいたいという意図がある。その保有価値を象徴的に示すひとつが、500 万口以上を保有する投資家に対して送られる植樹証明書である。 なお、投資に寄付をかけあわせるという仕組み自体は以前からあるものだが、本ファンドは、寄付活動に期限を設けずファンドが存続する限り継続するとしている点に、従来の商品とは異なる特徴がある。

事業(活動)の成果・効果

ファンドの純資産総額は、2021 年 11 月 1 日現在で 600 億円超。これは、予定される植樹本数に換算すると年間約 7,000 本におよぶ。当初は年間 3,000 本から 5,000 本の植樹を見込んでいたので、予想を上回る反響があるといえる。個人だけでなく法人の投資家もいて、広く関心が寄せられていることが分かる。
植樹活動への参加や植栽地への見学を要望する声も寄せられている。新型コロナウイルス感染症をめぐる社会情勢を鑑みるとすぐに実施することは難しい状況にあるが、まずは大和アセットマネジメントで植栽地を訪れて動画撮影を行い、これを投資家に対して配信することが計画されている。

事業(活動)をスタートするまでの経過

脱炭素社会の実現をめざすこのファンドの商品構成を考えるにあたり、投資信託のメーカーとして顧客と共に脱炭素への道筋を歩むことが重要だと考えた大和アセットマネジメントは、植樹プロジェクトを遂行できる寄付先の選定についてインターネットで徹底的に調査。検索キーワードとしたのは、たとえば、「植樹証明書」である。
単に植樹活動をしているというのみならず、その成果が第三者に認証されていること、またそれが証明書の発行という目にみえる形で投資家に渡せるようにすることは、ファンドの寄付先の選定にあたって重要なポイントだった。これは、投資家に保有価値を実感してもらうという観点ではもちろんのこと、継続的に実施するために説明責任を果たす上でも重要。
さらにまた、寄付先となる団体が実績について情報開示をしていること、また、認定特定非営利法人格を有することも、選定にあたっては重視された情報である。寄付先の団体に活動を委託するにあたっては、情報開示と第三者による証明こそが、その活動が実際におこなわれていることのなによりの証となるのである。
環境リレーションズ研究所が寄付先に選ばれたのは、以上のように、植樹証明書の発行をしていること、クレジットカード会社や銀行など大手金融との取引実績を含む団体の情報開示がなされていること、認定特定非営利活動法人格を有していることといった要件を満たしたからである。さらに、具体的な仕組みを大和アセットマネジメント・環境リレーションズ研究所で検討していく際に、NPO 理事長より、NPOとして出来る事、出来ない事を明確にした上で理由を説明されたことも、大和アセットマネジメントにとっては、信頼を深める大きな要因となった。

今後の展開方向

SDGs や ESG 投資の観点から、今後、投資家に対してより分かりやすくい説明が求められる。そうした状況の中、ファンドとして「インパクト・レポート」を作成する予定がある。内容は、ファンドのポートフォリオに各企業がどうして選定されたのか、ポートフォリオの二酸化炭素排出量に対してどのようにカーボンオフセットしているのか等を考えている。
同様のファンドを次々とつくるというよりは、このファンドを長期で育てていけるよう運用し、多くの投資家に PR していくことが重要だと思っている。インパクト・レポート等を通じて投資家に継続的に情報提供をしていく。

事業(活動)の課題、行政・施策等への要望

J-クレジットについては、間伐や経営林を対象としていて、林齢の低い植樹は対象となっていないので、制度は利用していない。
J-クレジットに代わる仕組みを用意するとしても、利用するためには利害関係者ではない第三者による認証が不可欠。任意にやるのでは認められず、一定のルールが必要。その認証に行政の役割があるのではないかと考えている。
税制優遇等については、認識はしているが、優先順位としては低い。