データで見る企業の意識の実態

「企業の森づくり」の歴史的変遷を概観する中で、地球環境問題の深刻化や企業によるCSRの取組の活発化、そして森林分野によるサポート体制の強化といったそれぞれの動きが相乗効果を生み出す中で「企業の森づくり」の取組が飛躍的に発展し、広まり深まりつつある状況を紹介してきましたが、その様な動向を踏まえて、大企業を中心とした「企業の森づくり」への取組意向や、既に取組を行っている企業の取組実態に関するアンケート調査を概観して、その傾向や特徴を紹介します。

「企業の森づくり」に係るアンケート調査」実施概要

  • 【調 査 者】社団法人国土緑化推進機構
  • 【調査期間】平成18年6月26日~7月10日
  • 【調査対象】従業員1,000名以上
  • 【回 答 数】(意向調査)企業285社、(実施事例)101事例

*個別事例の調査対象は、過去3年間に限る

「企業の森づくり」への取組意識

(1)「企業の森づくり」への興味・関心

data_img01「企業の森づくり」には、積極的に興味・関心を持っている企業は53.7%あり、将来を含めると90.9%もの企業が興味・関心を寄せており、非常に注目が高まっていることがわかります。

(2)今後新たに、または拡充して「企業の森づくり」に取り組む場合に実現したい目的

「企業の森づくり」に取り組む目的は、「社会貢献としての地球環境・地域環境保全・改善(事業活動と直接関係は薄い要素)」と回答した企業が59.6%と最も多く、次いで「地域社会への貢献(地域づくり、子どもの育成等)」、「従業員に対する環境保全意識の向上、環境教育」となっており、顧客や株主等に対する企業イメージの向上よりも、社会や地域への貢献や社員教育に重きを置いていることが伺えます。

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(3)「企業の森づくり」の実施場所についての希望

「企業の森づくり」は、(3)の結果に対応する形で、「都市部や事業所周辺の身近な場所の森林」を挙げた企業が約5割に上り、次いで「地域住民やNPO、学校等との交流が出来る森林」、「目的の環境保全効果等を最大限発揮できる森林」となっており、地域貢献としての性質が強いことが伺えます。

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現在行なっている「企業の森づくり」について

(4)森づくりに関連する取組内容について

現在行なっている森づくりに関連する取組内容は、「従業員等を対象とした普及啓発・情報発信」が最も多く(28.8%)、次いで「NPO・市民団体等への会社としての寄付・助成」(26.0%)が多く、これらに最初に着手する企業が多いことが伺えます。

(2)の実施目的を踏まえると、「地域環境・地球環境の保全・改善」が最も大きな目的であるものの、実際は「従業員に対する環境保全意識の向上、環境教育」としての要素が上位を占め、内部から取組をはじめ、徐々に内容を広げていく傾向にあることが伺えます。

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(5)「企業の森づくり」に着手した契機

「企業の森づくり」の着手は、「CSR関連部署での検討」が契機となった場合が45.8%と最も多く、次いで、「自社の上層部からの提案」が29.7%となっています。一方、「地域住民やNPO等の外部からの要請」も21.8%あり、地域社会等の要請も考慮しながら取組がはじまっている場合も少なくないことが伺えます。

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(6)「企業の森づくり」の開始年度

data_img06「企業の森づくり」の開始年度は、2000年度以降の取り組みが72.3%を占めており、特に2004年度以降の取り組みが47.5%となっており、「日本のCSR経営元年」といわれる2003年以降に、特に取組が増加傾向にあることが伺えます。

(7)「企業の森づくり」活動地の所有形態

「企業の森づくり」の活動地は、「公有林」(32.7%)、「国有林」(26.7%)と、行政が保有する土地で行っているケースが多い傾向にありました。

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(8)連携・協働した団体 (実施企業調査)

具体的に「企業の森づくり」を行う際に連携・協働した団体については、「行政」が54.5%と最も多い傾向にあり、次いで「NPO/NG0」が36.6%、森林組合等の「森林分野の事業体」が30.7%、「地域組織・住民組織」が24.8%となっており、多様な主体と組織との連携・協働が不可欠であることが伺えます。

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「企業の森づくり」の取組意向と実態の比較

(9)期待する森林の機能

「企業の森づくり」を通した発揮を期待する森林の機能を、今後の取り組む意向を有する企業と既に実施している企業を比較すると、今後の意向としては「地球温暖化防止に貢献する動き」(70.5%)への期待が最も高い一方、実施企業は、「自然に親しみ、森林を学ぶ等教育の場としての働き」(61.4%)が最も高い結果となっており、従業員等のステークホルダーに対する普及啓発・環境教育を重視した取組が多いことが推察されます。

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(10)配慮しているステークホルダー

「企業の森づくり」を実施する際に配慮するステークホルダーについては、今後の取組意向としては、「地域社会」、「顧客・消費者」、「従業員」が中心的で、「株主・投資家」も約4割程度挙げられていましたが、実施企業は「地域社会」、「従業員」が中心的で、「顧客・消費者」は約4割程度という傾向が見られました。実際に森づくり活動を実施すると、地域社会や従業員に対して強い影響があることが伺えます。

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(11)実行段階の課題

「企業の森づくり」を実施に際して、実行段階の課題としては、今後の実施意向を有する企業は、「森林整備の費用負担が大きい」、「参加者の募集・確保が難しい」などを中心に多くの課題を想定していましたが、実際に実施している企業は、費用面や人の確保よりも、「事前準備等に時間を要する」点を課題として認識していましたが、総じて課題はそれ程多くはない、という印象で捉えられているといえます。

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(12)評価段階の課題

評価段階の課題としては、いずれにおいでも「定量的な評価・成果が得られない」が揚げられましたが、「内部関係者の評価・満足が期待しにくい」については、今後の意向としては課題と認識する企業が多くいましたが、実践した企業は殆ど課題とは感じていない、という傾向がみられました。

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この様に、近年地球環境問題やCSR等への社会の注目が高まる中で、多くの「企業の森づくり」への興味・関心が高まるとともに、この数年の間に多様な業種・業態の企業による取組が飛躍的に広まりました。そして、これまでの「企業の森づくり」は、従業員等の環境教育や地域社会への貢献に資するプログラムを中心として取組が展開されてきている特徴がみられました。

一方で、森林は私たちの暮らしを支える多様な公益的機能を発揮しており、また循環型社会の形成に資する多様な生態系サービスを創出していることを考慮すれば、「企業の森づくり」には今後更なる広がりや深まりの可能性を秘めているといえ、企業や地域のニーズ等を踏まえた今後の幅広い「企業の森づくり」の展開が期待されているといえます。