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森づくりコーディネーター

Interview:森づくりコーディネーター✕企業

interview 04 森づくり企業

地域全体が活性化する森づくりで、ポジティブな変化を!

三機工業株式会社
サステナビリティ推進本部 サステナビリティ推進部 専門課長 
兼田 さゆり さん

2010年から育樹活動など森づくりを支援

どのようなお仕事をされていますか?

日頃は主に、サステナビリティ経営の推進に向けた社内啓蒙活動や、「SANKI YOUエコ貢献ポイント制度」に関連する森づくり関連の業務に取り組んでいます。当社では、環境と社会価値の向上を企業価値の向上と両立させるサステナビリティ経営を進めており、すべてのステークホルダーから選ばれ続ける企業を目指しています。

社会の発展と環境との調和を目指す、SANKI YOUエコ貢献ポイントのシンボルマーク。
ECO2…エコ(Ecology) に貢献(Contribution) することによって、CO2を削減。

以前はどんなお仕事でしたか?

入社当初は総務部で2年間勤務し、その後秘書業務に2年間従事しました。次いで、直接お客様にさまざまな提案を行う電気設備の営業職に約10年間携わりました。出産に伴う育児休暇を取得後は、CSR推進部に配属になり、コンプライアンス関連や女性相談窓口などを担当しました。その後、サステナビリティ推進部が新設され、現在に至っています。

どうしてこの仕事に係るようになったのですか?

森づくりに関連する業務については、2014年にCSR推進部に配属になり、「SANKI YOUエコ貢献ポイント制度」に関連する社会貢献活動を担当したことがきっかけです。

御社が森づくりを始めようとしたきっかけは何ですか?

当社は、建築設備やプラント設備など社会インフラに関連する事業を展開する総合エンジニアリング企業です。私たちは省エネルギー設備を提供する企業であり、環境への配慮も欠かせないことから、2010年度からお客様に当社が納入した省エネ設備CO2削減量に応じて、植樹や育樹活動を含む森づくりを支援する仕組みを作り「SANKI YOUエコ貢献ポイント制度」と名付け、実施してきました。

SANKI YOUエコ貢献ポイントの仕組み図。

これまでに、省エネ設備の納入によってお客様のCO2削減量は約317,000トンに達し、植樹本数は約21,500本になりました。(2022年3月時点)

支社・支店のある地域に「SANKI YOUの森」をつくり、地域と交流を深めたい

御社の森づくりの内容や特徴をご紹介ください。

SANKI YOUエコ貢献ポイントを通じて、これまで7つの植樹プロジェクトを支援してきました。また、創立90周年記念事業およびSANKI YOUエコ貢献ポイント10周年記念事業として、2015年から山梨県甲斐市で「三機の森」の森づくりを行っています。この取り組みでは広葉樹を植え、その後も毎年欠かさず下草刈りに通っています。これらの活動には、支援先の植樹プロジェクトのイベント参加を含め、これまで合計約500名の社員やその家族が参加しています。

今後は、当社グループの支社・支店がある地域に「SANKI YOUの森」をつくり、社員同士や地域の方と交流できる場所として、また自然と触れ合う楽しさや環境保全の大切さを実感できる場所として発展させていきたいと考えています。

そして、当社グループは「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画しています。このことから、生物多様性の保全に貢献する森づくり、および地域の課題に寄り添い、地域の方々にも喜ばれるような森づくりに貢献していくことを目指しています。

※「生物多様性のための30by30アライアンス」は、2021年6月のG7サミットにおいて約束された2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護するという「30by30」の目標を掲げ、達成に向け参加した行政、企業、NPOなどの有志連合

栗東市で、経済林の整備と、空間利用による地域活性化を両面からサポート。

活動場所を栗東市に決めた理由を教えてください。

2022年2月に、当社グループはカーボンニュートラル宣言を行いました。お客様の脱炭素化支援とサステナブルな社会の実現に向けて、SANKI YOUエコ貢献ポイント制度を強化することとし、2022年度よりこの制度のポイント換算率を引き上げ、環境保全活動支援も拡大することとしました。ただ、これまでの環境保全活動は主に関東圏であったため、今後は支社・支店がある地域へと活動を広げ、社員交流や環境保全意識の向上の場としていく計画です。その第一歩として、関西・中部地方での植樹地の検討を開始しました。

植樹候補地の選定に際して、いくつかのNPOや都道府県のWEBサイトを参考にリサーチを行っていた中、滋賀県の琵琶湖森林づくりパートナーの取り組みを知り、これがきっかけで問い合わせをしました。私にとって、滋賀県の企業のための森林づくりページは、コンセプトや活動内容、協定の仕組みが明確で理解しやすく、具体的な取り組みをイメージしやすかったです。

栗東市を選んだ理由は主に2点あります。まず第一に、関西支社や中部支社からもアクセスしやすい好立地であることが挙げられます。関西、中部エリアからバスで2時間弱で到着し、子どもも参加しやすい場所でした。第二に、栗東市金勝地域での森林整備(スギ・ヒノキの育成)と、地域活性化につながるアウトドア体験に適した森林空間の整備という「両面」での貢献が可能であることが決め手となりました。

この「両面」について少し補足します。今回候補地を探していた際、滋賀県琵琶湖環境部森林政策課やまの健康推進係さんから現状の課題を2点ご提示いただきました。一つは、森林整備における森の若返り、すなわち「伐って→使って→植える」という森林資源の循環利用を進める必要があること。もう一つは、高齢化や過疎化により地域の持続可能性が大きな課題となっていることでした。そして、これらの課題解決のためには、森林整備だけでなく、アウトドア体験などができる森林空間の整備を通じて交流人口を増やし、地域活性化に繋げていくこと、その両方とも必要だという点に深く共感しました。

隣接するマウンテンバイク用のアウトドアコース

また、この両面での取り組みは、協定という形で進めるものとしては県内で初の事例になると伺いました。そのため、このケースが良い事例として広がり、支援の形として一般化していくことへの第一歩に携わることができるのは、企業にとって大きな喜びです。

栗東市との森づくり協定について、何から始め、どう展開していきましたか?

まず、私たちの希望を伝えて候補地を探してもらい、見つかるのを待つことからスタートしました。最初の問い合わせから対応してくださった滋賀県琵琶湖環境部森林政策課やまの健康推進係さんが、私たちの要望にマッチする候補地を見つけて提案してくださいました。その後は、社内での展開、協定内容の社内承認の進行、現地訪問、調印式の準備などを滋賀県森林政策課やまの健康推進係と共に進めていきました。不明点や調整が必要な箇所についても丁寧な回答をいただき、大変心強かったです。

2023年3月には、滋賀県と栗東市の立ち会いのもと、金勝生産森林組合さん、栗東市観光協会さんとの間で琵琶湖森林づくりパートナー協定に調印しました。その後、栗東市観光協会事務局さんにコーディネート業務が引き継がれ、窓口として取り仕切ってくださっています。そして、同年11月には伐採見学と枝払い作業の体験を行いました。

お互いの感覚の違いも、理解を深めるチャンスとなる。

苦労したこと、楽しかったこと、こころに残っていることなど。

これまで、NPO団体への寄付を通じて森づくりを支援してきましたが、自治体との協定締結は今回が初めてでした。寄付とは異なるプロセスに対応することに苦労した面もありました。例えば、支払いのタイミングがNPOと自治体とでは異なり、自治体によっても違いがあったため、企業の予算管理の観点からすると新たな発見でした。
また、当社がこれまで行ってきたのは主に広葉樹の植樹による里山再生であり、経済林への支援は初めての試みでした。「伐採→出荷→新たに植える」というプロセスにはそれぞれ最適な時期があり、現地のタイミングは外せません。その中で社員イベントの日程や内容を決定するのは正直難しかったですが、このやり取りを通じて林業の実情に触れ、理解を深める貴重な機会となりました。

楽しかったことは、伐採見学や枝払い作業の体験です。実際に伐採を間近で見たり、のこぎりで枝払いをしたりするのは初めてで、その迫力に驚きました。また、森林組合の方から日常業務について伺うことも新鮮で、貴重な経験でした。直接現地で触れ合うことが、理解を深める上で非常に重要だと感じました。

一番心に残っているのは、自治体との協定締結が初めてで、手探りでの対応が多かった中、滋賀県森林政策課やまの健康推進係の方々が、私たちの意向を理解し、各所との調整を進め、協定締結や調印式に至るまでサポートしてくださったことです。その適切かつ親身な対応には大変助けられ、スムーズに進めることができました。心から感謝しています。

仲立ちする支援組織や森づくりコーディネーターに期待することはありますか?

私たちの林業に関する知識がまだ浅い中で、支援組織や森づくりコーディネーターの方々は、私たちの意向を理解しながら、可能なアクションとその限界を明確に示して、関係各所との調整を進めてくださいました。プロジェクト進行における誤解を避け、安心感を提供するその進め方は、私たちにとって非常に心強かったです。今後も、企業と現場の間の橋渡し役として、円滑なコミュニケーションとプロジェクトの進行を支えていただければ幸いです。

「森林整備と森林空間利用」両面での貢献を!

今後の展望を教えてください。

今後の展望として、これまで協定締結前の現地訪問、調印式、そして初年度の伐採や刈払い作業体験を経験し、地域への愛着が深まりました。来年度は、社員が参加する植樹イベントを計画しています。森づくりへの実践的な参加を通じて、私たちの環境への貢献意識をさらに高めたいと考えています。さらに、アスレチック体験や観光など、地域の魅力を体験する時間を設けることで、地域文化への理解と愛着を一層深めることを目指しています。

「森林整備と森林空間の利用」の両面で貢献することは、私たちにとって重要な目標です。栗東市金勝地区での森づくりプロジェクトへの参加により、地域の魅力を知り、個人的な愛着を育むことができました。この経験が、たとえば社員が休日を過ごす場所として選択するようなきっかけになればうれしいです。

Message

森づくりへの参加を考えている企業・団体へ向けて、
一言メッセージをお願いします。

兼田 さゆりさん
地域の課題に真摯に向き合い、積極的に貢献することは、企業にとって非常に意義深いことであり、大きな喜びをもたらします。森づくり支援を通じて、実際に現場で植樹や育樹作業に携わり、地域の人々と交流を深めることで、想像以上に豊かな経験を得られると確信しています。支援組織や森づくりコーディネーターの方々と協力し、地域全体の活性化に繋がる森づくりに参加しませんか?一緒に新たな取り組みを始め、ポジティブな変化を創出しましょう!
interview04
コーディネーター

企業も地域も、関わる人達が幸せを感じられる、持続可能な森づくりを。

滋賀県 琵琶湖環境部 森林政策課 やまの健康推進係
平野 里子 さん(左) 西村 辰也 さん(右) 
森林所有者
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