Interview:森づくりコーディネーター✕企業
地域との架け橋になってくれたのは、信頼できるNPO。
企画グループ 経営企画部 サステナビリティ推進室 主任
企画グループ 経営企画部 サステナビリティ推進室 主任
業務を通じた社会課題の解決により、企業価値を上げる
どのようなお仕事をされていますか?
山鹿:当社では、「サステナビリティ」を経営の軸に据えて、事業を通じた社会課題解決と企業価値向上の両立に取り組んでいます。
サステナビリティ推進室において、さまざまな社会貢献活動を推進しつつ、社会課題の解決に繋がる取り組みを各部と連携しながら推進しています。当室独自の取り組みとしては、地方自治体との連携や金融教育、社内へのサステナビリティ浸透等を行っています。
以前はどんなお仕事でしたか?
山鹿:2014年新卒で入社し、最初は営業事務を行うセンターで個品割賦契約の申し込みの受付・審査・契約内容確認などの事務を2年半行っていました。
2016年10月より広報・宣伝部CSR推進室に着任し、社会貢献活動の企画・推進に従事しました。その後2018年10月にCSR推進室からサステナビリティ推進室への名称変更を経て、現職となります。
佐藤:2012年新卒で入社し、約8年間、営業支店でお客さまへのお支払いプランの提案業務や、取引先に対する当社商品の推進営業などを行っていました。
2020年10月より本社に着任し、DX関連のスタートアップ企業との協業に向けた事業企画に従事しました。以前より、事業を通じた社会課題の解決に興味があり、社内公募制度を活用し、2023年4月より現職に就きました。
御社が森づくりを始めようとしたきっかけは何ですか?
山鹿:2011年、東日本大震災のボランティア活動から当社の社会貢献活動がスタートしました。2014年には全社員を対象にしたボランティアプログラム「Orico One Step Program」を開始しました。これは、CSR推進室がさまざまなNPOや団体が行うボランティア活動を紹介し、社員が選んで参加するというマッチングプログラムになります。
また、社会貢献活動を行う際に活用できる会社の制度として、ボランティア休暇、ポイント付与、保険の支援などがあります。
環境に関する社会貢献活動として、当社ではこれまで「木づかいプロジェクト(間伐材を活用した積み木や知育パズルづくり)」をスポットで行っていました。しかしここ数年で金融業界でも環境への取り組みが重要視されるようになったこともあり、環境に対する社内意識のさらなる向上や、短期的ではなく長期的な環境保全の貢献を推進するべく、2019年よりシンボリックな社会貢献活動を検討しました。木づかいプロジェクトでお世話になっていたNPO法人森のライフスタイル研究所さんのアドバイスや、他社様の活動事例も参考に検討し、森づくり活動に取り組むことを決めました。
本社別館所在地の埼玉県で、アクセス良く安全に活動できる森を
活動場所を秩父市に決めた理由を教えてください。
山鹿:活動場所となる森は、当社本社所在地の東京都または本社別館所在地の埼玉県で探したいと、森のライフスタイル研究所所長の竹垣さんにご相談したところ、東京都ではなかなか活動しやすい森が見つからず、埼玉県の約6割の森林を保有する秩父市で探していただきました。
社員参加型の活動が実施しやすいように、アクセスが良く、平坦な場所がある森として、2カ所候補に挙げていただき、実際に現地に何度か足を運んでみると、季節によって草木の色や森の全体の様子が様変わりし、風景の変化を感じながら作業ができることも分かり、安全に幅広い活動ができる点からこの場所に決めました。
「埼玉県森林CO2吸収量認証書」を4年連続取得
御社の森づくりの内容や特徴をご紹介ください。
佐藤:当社の森づくり活動は、2020年の開始からこれまでに計5回実施し、延べ69名の社員が参加しました。1回の活動で本社や関東近郊の支店、グループ会社の社員が15名程参加し、オリコグループとして取り組んでいます。
山鹿:また、埼玉県にはCO2吸収量認証制度があり、秩父市と埼玉県の森林保全に貢献しつつ、CO2排出量削減に貢献することを目的に毎年申請を行っています。
これまでオリコの森プロジェクトで森林整備活動を行った際のCO2吸収量が認証され、埼玉県より「埼玉県森林CO2吸収量認証書」を受領しました。
2021年1月より、全国の社員と家族が気軽にできる森づくり活動として、社内で「書き損じはがき」を募集しています。集まったはがきは3枚で1本の苗木に交換し、オリコの森に植樹しています。なかなか森への活動に行けない遠方の社員にも間接的に参加してもらえるのがポイントです。
埼玉県、秩父市と三者協定を締結、普段の森林整備はNPOに業務委託
秩父市との森づくり協定について、何から始め、どう展開していきましたか?
山鹿:最初、森づくりの知識がほとんどなかったので、以前よりお世話になっていたNPO法人森のライフスタイル研究所 竹垣さんに相談し、活動する森の選定や埼玉県、秩父市のご紹介をいただきました。秩父市の森林づくり課とのお話を竹垣さんに進めていただき、当社としても秩父市役所、埼玉県庁を訪問して、森林の課題などを直接うかがい、その中で当社ができることを考えました。
1年ぐらいかけて何度か打ち合わせを重ねて協定の内容を深め、社内の決裁も取り、2020年7月8日、埼玉県、秩父市と「埼玉県森林づくり協定」を締結しました。
その後、同年11月3日にオリコの森看板除幕式と秩父市の木「カエデ」の記念植樹を行い、「オリコの森プロジェクト」を開始しました。ようやくプロジェクトが始まり、除幕した瞬間は非常に感動的でした。 協定は、2020年7月8日から2025年3月31日まで、埼玉県と秩父市との三者間で締結しました。
森林整備計画は、当初、一部広葉樹の侵入が見受けられるカラマツ林を、既存の造林技術により、カラマツと広葉樹の混交林へと造成しなおし、森林の再生を図っています。5ヘクタールの森で、1ヘクタールずつ順番に植樹を、今はカエデを植えています。森のライフスタイル研究所さんとは、業務委託契約を一年ごとに結んでおり、当社社員の活動ができるように、私たちが行けないときも通年で森林整備をしていただいています。
佐藤:これまで5回の活動をとおして、植樹・伐採・間伐・作業道づくりを行ってきました。 1日の流れは、午前10時に最寄りの西武秩父駅に集合、みんなでバスに1時間ほど乗って11時に森に到着します。その後、森のライフスタイル研究所さんのご指導のもと1時間程作業します。その後昼食をはさみ、13時〜14時半頃まで続きの作業を行い、15時半に駅で解散という流れになります。お弁当の発注は秩父市内のお弁当屋さん、バスは秩父の会社で、少しでも地域に関われるようにしています。
樹齢7、80年の木をみんなの手で切り倒した感動!
苦労したこと、楽しかったこと、こころに残っていることなど。
佐藤:社内への周知と活動参加者の募集に時間がかかりましたが、今では参加者人数も定着し、リピーターの社員も増えてきています。今後は新規参加者も増えるように一層活動を拡大していきたいと考えています。今まではコロナの影響もあり、人数を絞っていましたが、今後はファミリーでの参加も検討しようと思っています。
心に残っているのは、私自身、昨年11月に初めて参加したときに、樹齢7、80年ぐらいの木をチェーンソーを使わずにノコギリでギコギコやりながら、みんなで力を合わせて伐ったことです。あの達成感や、木が倒れる瞬間などは感動的でしたし、木を切った後の香りなども体感する機会はなかなかないので、参加しないと味わえないことをみんなで共感できたのが良かったです。
山鹿: やりがいを感じるのは、リピーターも増えて、社員に本活動の取り組みが広がっている実感があることです。また、日常ではできないような体験ができ、環境意識も高まり、参加者からもプラスな意見や感想が多くいただいています。そして、活動の成果が実際にCO2吸収量として認証を受けることができ、やりがいに繋がっています。
さらに、秩父市や埼玉県とのつながりができたのは、地域連携という面でも良かったと思います。今後は、もう少し幅広く地域連携に取り組んでいけたらと思っています。
今後は、地域市民のみなさんとの交流の場も
仲立ちする支援組織や森づくりコーディネーターに期待することはありますか?
佐藤:当社はマテリアリティの一つに「持続的な地域づくりへの貢献」を掲げており、地域との連携に力を入れているので、地域と私たち企業を結ぶ架け橋となるような存在になっていただきたいと思います。また、地域の市民の方々との交流の場の創出などもご支援いただけると、地域社会への貢献にも寄与できるのではないかと思います。
山鹿:これまで以上に地域との連携を強化していきたいと考えていますので、企業と地域市民との交流の場、双方向のコミュニケーション機会の創出を支援いただければ幸いです。
また、何から始めたらいいのかと悩まれる企業が多いと思うので、森のライフスタイル研究所さんのような自治体や地域との架け橋になってくれるコーディネーターがいると円滑に進むと思います。