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森づくりコーディネーター

Interview:森づくりコーディネーター✕企業

interview 01 森づくり企業

創業時の想いを受け継ぎ伝える周年事業、
「100年前の緑の森へ」

米盛建設株式会社グループ 鹿児島基盤材センター株式会社 林業部 部長 
向 信勇 さん

森を守る「林業部」がある建設会社

どんなお仕事をされていますか?

米盛建設株式会社のグループ企業の一つ、鹿児島基盤材センター株式会社の林業部で、国・県等の地方公共団体、県森林整備公社、個人の間伐等の森林整備、海岸防災林造成(植栽)事業の受注および原木販売などを担当しています。

建設業はどちらかというと森を壊す側というイメージがあるかもしれません。が、弊社の場合は森を守る林業部もあります。米盛建設グループは総合建設業で、港湾工事などを主体にしており、アスファルトや生コンなど基盤材、材料となるものの製造・販売も行なっています。そういう中で、原木も一つの基盤材、一つの資源だろうということで、グループとして林業も行っている次第です。

どのような経緯でこの仕事に携わるようになったのですか?

もともと山が好きで、林業関係の大学で技術系を学びました。当時は屋久島で縄文杉の種を採る研究などもしていました。卒業後は県に入って、林業関係の仕事全般に携わりました。

県が持っている県有林の経営管理、環境の森や災害に強い森づくりなどの事業も担当しました。県を退職するタイミングでたまたま米盛建設からお声がかかり、林業部門の担当として入社したのが平成30年、第二の人生です。

100年前を想い、100年後も続けていけるような植林事業を

森づくりを始めようとしたきっかけは何ですか?

米盛建設は大正15年に創業し、令和3年に100周年を迎えるため、何か記念になる事業・イベントをと思案していました。記念講演会とか、建設部門としてのイベント、祝賀会的なものをやろうという計画もあったのですが、コロナ禍では開催が困難でした。

一方で、令和元年に弊社の専務が、かごしま緑の基金の大重さんと懇談した際、「再来年100周年を迎える」と言うと、大重さんから「植林活動をするなら協力します」との話が出まして、それを弊社社長が検討した結果、100年前を想い、100年後もまた続けていけるような植林事業をしましょうという方針になりました。

そのような経緯があり、創業100周年記念事業「100年前の緑の森へ」として、社長から正式に了承されたのが令和2年11月でした。100周年記念事業として、100年前の緑の森の植林事業と合せて、みどりの募金も行う、ということでスタートしています。

活動場所(森林)を決めた理由を教えてください。

弊社としては本社がある鹿児島近郊で森づくり活動をしたいというのと、今まで港湾事業を手がけてきて恩恵のある種子島でも行いたいという希望がありました。かごしま緑の基金の大重さんに相談すると、すぐに鹿児島市の担当者に連絡して市有林を紹介いただきました。幸いなことに市単独事業(市民と協働の森林づくり事業)として、市有林を企業の森づくり活動の場として提供する取り組みをされていたので、スムーズに進みました。

市から3カ所ぐらいご提案があった中で、鹿児島市郡山町八重山の森に即決定しました。ここは市内を流れる甲突川の源流となる水源地帯で、隣接地に八重山自然公園があって眺望も良く、アクセスも良いので、社員や家族が参加しやすい。また、公園に来る方への「PR効果」も期待できます。とても良いところです。

種子島については、自分たちで県林務関係部署に出向き、「どこかいい山がないか」と伐採跡地情報を探しました。情報を得ていくつかの現場を回った結果、役場の町有林に適地がありました。ちょうど伐採した後で、地元の集落の方に相談したら「いいですよ」と言っていただけて。それが中種子町牧川分収林です。広葉樹の伐採跡地で、眼前に屋久島や馬毛島を眺望できます。サクラを植えて、展望名所になったらいいと地元のみなさんも期待されています。

創業100周年記念事業として「100年前の緑の森へ」を展開

御社の森づくりの内容や特徴をご紹介ください。

米盛建設は、大正15年の創業時は、山から木を伐り出し、製材して材料として使用しながら建設業を営んできました。令和3年に100周年を迎えるにあたり、そうした創業当時からの木や森を大切にする想いを受け継ぎ、地域貢献・社会貢献の一環として、また、SDGsの実現にも貢献すべく、創業100周年記念事業「100年前の緑の森へ」(Back To The Green Forest100)を展開しています。

米盛建設グループの社員約300名が参加して、令和3年6月から令和8年3月までの5年間(以後更新可能)、森で植林事業を実施。人工林から広葉樹林へ、山の魅力となる花、果実、落葉、紅葉、昆虫等が楽しめる多様な森を植え、育てて行きます。同時に、緑の募金への寄付を行うものです。

活動はどのように展開していきましたか?

まずは活動場所を見つけること、これについては先ほどもお話しした通りです。場所が決まると今度は活動内容や期間等についての協定締結で、森林所有者(市など)と技術的助言者(かごしま緑の基金)と森林整備活動者(弊社)との3者協定となります。

かごしま緑の基金さんからは、「こういう15種を植えて混合樹林をしていこう」と、植栽樹種と選定理由が書かれた立派な方針書をいただきました。技術提案・指導と活動PRと、植えるときの資材・道具一式の貸し出しといったこともお願いしました。

協定を結んだのは令和3年6月、その後すぐ7月に鹿児島の森のヒノキ林を伐採、10月まで地拵えなどの整備を弊社林業部が行いました。それと並行して、記念イベントに向けてグループ内各社から1人ずつ選んで実行委員会組織をつくり、ジャンパー、のぼり、横断幕のデザインから、植栽方法のビデオ製作、地元新聞や業界新聞などへのPRまで、さまざまな準備をしました。

それでようやく記念式典および最初の植林活動に漕ぎ着け、鹿児島は令和3年11月、種子島は令和5年2月に開催しました。鹿児島では、グループ社員と関連企業の方々、地元関係者のみなさんが241名参加。広葉樹15種、照葉樹、落葉樹種混合で合計850本を植栽しました。

その後鹿児島では第2回の植林活動を令和5年2月に実施しています。

森づくり事業の楽しさは、参加者の笑顔と森への愛着

苦労されたこと、楽しかったことなど心に残っていることがあれば教えてください。

弊社グループ内での森づくりの趣旨周知、準備体制づくりには苦慮しました。また、協定締結や式典等の日程調整、マスコミ対応、コロナ禍でのイベント開催など、苦労したことは数え切れません。

一方で、記念だから全員統一しようというジャンパーや、のぼり、横断幕をつくるに際して鹿児島県のPRキャラクタ-使用等アイデアがたくさん出たことや、植樹方法についてビデオを製作して社内ネットワーク(PC)で説明したことなどが楽しく印象に残っています。

何より嬉しいのは、参加された方がみんな笑顔で植栽作業を終えたこと。そして植栽後の生育状況を聞きに来る社員がいたり、独自に植林現場へ行き観察している社員もいたりして、それだけ関心と愛着を持ってもらえているということです。

仲立ちする支援組織、森づくりコーディネーターに期待することは?

企業が森づくりに参画しやすくなるような情報の発信を期待します。具体的には、公有林の活用を積極的にアピールするなど、活動場所の情報提供。そして、会社が目指す森林活動方針に役立つ森づくりの助言などです。

Message

森づくりへの参加を考えている企業・団体へ向けて、
一言メッセージをお願いします。

向 信勇さん
森づくり活動は、地域貢献・社会貢献の一環とし、地球温暖化対策等にも重要です。日頃業務にあまり関係のない森林内で、植林し、木を守り育てる森づくり活動は、社員のみなさまにとって貴重かつ楽しい体験となります。ぜひ、みなさまも森づくり活動を初めてみませんか。
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