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市民の森づくり

活動事例

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森を想う森林ボランティア300名が整備活動をつづける、県下最大の組織

1996年設立のNPO法人ひょうご森の倶楽部は、兵庫県内の19ヶ所の森を守り育てているボランティア活動団体で、企業の森づくり活動を支援してきた実績も数多くあります。現在の会員数は約300名で、兵庫県の森林ボランティア講座を受講した人を中心に構成されています。
今回は、現会長の山下広行さんと、前会長の福田正さんにお話をうかがいました。

─ おふたりは、どのような経緯で森づくりの活動に関わるようになったのですか?

山下:森林ボランティア講座を受講したのが最初です。受講したのは阪神淡路大震災があった1995年で、さかんに「ボランティア」が話題にされるなかで、新聞で森林ボランティア講座の記事を見て、いっぺん参加しようと。私はもともと農山村の生まれで、子どもの頃は山仕事の手伝いをした経験もあるので、森が何かおかしくなっているならばと参加して、そのまま続いているということですね。
だから、私は最初の団体の立ち上げからおります。兵庫県が、森林ボランティア講座の1回目と2回目の受講者に、活動しませんかと呼びかけたときから参加しています。当時はまさかこんなふうに長く関わるようになるとは思わなかったのですが。

福田:私は1999年からなんですが、それまで全日本サーフ(全日本サーフキャスティング連盟)という釣り人の仲間と、海の清掃活動をずっとやっていたんです。真夏の暑いときに汗でズブ濡れになって海岸清掃をやったり、古くはナホトカ号(1997年の重油流出事故)のオイル回収に日本海岸まで行ったりとかね。そうするなかで、海のことも森が一番の元になるよということを聞いて、自分らのフィールドを守ろうと思ったら森が大事やと気づいたわけです。
そのときの全日本サーフの会長が「何をしたらいいか、わからない」と言うので、まずは自分で経験しないとわからないからと、ひょうご森の倶楽部の活動に参加して、どんなことをするのか教えてもらったり、いろんな研修を受けたりするようになったのが始まりでした。

お話を伺った山下広行さんと福田正さん

─ ひょうご森の倶楽部の活動について、教えてください。

活動の内容としては、1つめに「森林ボランティア活動」として、県内全域19か所で定期的に活動しています。終了した活動地を含めると40か所になります。人工林の間伐もありますし、里山林の除間伐だとか、竹林もありまして、活動地に応じた作業を実施しています。活動地の所有者は、国有林も県有林も市有林もありますし、地区のヤマである財産区(※1)とか個人の私有林もあって、活動地によってさまざまです。
また、作業するだけではなく森を楽しみましょうよと、2つめに「森とのふれあい活動」もおこなっています。
さらに、3つめには森で活動する仲間づくりということで、行政やほかの団体や企業さんとか地域等と連携した活動や活動の支援をしています。たとえば、兵庫県からは森林ボランティア講座とリーダー養成講座を十数年前から委託していただいて、講座の企画・運営や一部の講義と実技研修の指導を担当させてもらっています。県下最大の組織でノウハウも持っているので、安心して指導役を任せられるのでは。
それから、企業の森づくり活動もお手伝いしてきました。兵庫県の瀬戸内側には大きな企業があり、森林もいっぱいあるので、企業から問い合わせがきます。メインの活動は1番目の「森林ボランティア活動」ですが、われわれは活動しているといっても広い森の中では点にもならないようなことなので、活動する人を増やすことが大事ということで、その1つが企業さんの森づくりの支援でしてね。それを積極的に働きかけているというわけでもないですが、できる範囲で支援させてもらっています。

森林ボランティア活動の活動地

森林ボランティア活動の活動地 
19ヶ所(2024.3現在)

※1:公有林の中には「財産区有林」といって、1953年の町村合併促進法によって町村が合併される前の公有林が多く存在します。現在の町村ではなく、合併前の地域「財産区」で管理されている森林です。
詳しくは、「森林の所有と利用」ページ内「民有林」にてご確認ください。

─ 企業から直接連絡があって、相談を受けるのですか?

福田:県の治山課と兵庫県緑化推進協会が窓口なので、そこに問合せがいくんですよ。ただ、窓口の人はあんまり現場を知らないから、すぐに情報が流れてくる。うちはそれを聞くと現地に確認しに行ったり、先方さんが希望されている内容を把握したりして、懇切丁寧に対応してきました。

山下:昨年から支援を始めた企業さんの場合は、企業さんから一緒に活動させてくれませんかという話が直接当倶楽部にありました。それで、こちらから企業に出かけて行って、兵庫県には「企業の森づくり」の仕組みがありますよと紹介して、そのあとに県から説明に行ってもらって実際に活動が始まり、当倶楽部が支援しているケースがあります。
これまで14社の企業さんと関わっています。森づくり活動の準備などのお手伝いしたところを含めると19社になります。

兵庫県の企業の森づくりの仕組み

兵庫県の企業の森づくりの仕組み

─ 企業と連携して取り組んだ森づくりの実例を教えてください。

福田:「日本触媒・水源の森」づくり活動(株式会社日本触媒)は、ほぼ15年やってきました。最初の企画書から作って、役員会にはかってもらうための社内資料も準備して、そこからのスタートでしたから非常に関わりが深かったです。実際に、下草刈り、間伐体験、遊歩道づくり、植樹などの森づくりの活動もされましたし、樹名板の設置、ベンチ作り、川の生物調査などもおこないました(2023年3月終了)。また、せっかくここまでの森づくり活動をやっているのだからと、社内でも社員さんにアピールしてもらったり、取引先にも知っていただくようにと実績を年表にまとめるなど、広報資料も作らせていただきました。

─ この活動は、どのようなきっかけで始まったのですか?

福田:日本触媒さんは緑の募金にものすごく寄付されていたのですが、環境保全にお金は出すけれど社会的にはあまり認識されていなかったんです。それで、中国で植林活動を始めていたのですが、日本の中でも環境活動をやりたいな、社員にもそうした意識を持たせたいなということで、緑の募金を扱っている国土緑化推進機構に話が入った。それで、どこでやりますかという話になり、われわれに相談がありました。日本触媒さんは姫路に大きな工場があって水も使われるので上流部の森を整備したらどうですかと提案し、また、地元の宍粟市役所とか観光協会などにもわれわれが説明しに行きました。活動地は国有林で国定公園であり、いろんな活動に縛りがあったから専門家にアドバイスをもらったり、兵庫森林管理署にも毎回来てもらって一緒にやってきました。いい場所で、行くと心が安まるということから社員研修をおこない、新入社員はそこで必ず研修を受けることになりました。

山下:仕組みとしては、国土緑化推進機構から私どもの活動に助成金をいただいて、その活動に企業さんも参加していますというかたちでしたね。
しかし、新型コロナ禍で社員がたくさん参加される活動がストップされて、残念なんですけど、2023年3月に活動を終了されました。

福田:緑の募金にお金をたくさん出しているのに、社員が動けへんとはどういうこっちゃという話では、神戸製鋼の労働組合もそうした話から始まりました。当時の組合の委員長が相談に来られて、やるに当たって環境の講義もやってほしいと要請もいただき、組合員の研修もおこないました。

─ 企業の森づくりの最近の傾向についてお感じになることはありますか?

福田:いっときは、企業の森づくりが注目されたけれども、それが一時下火になりましたね。景気の問題もあったし、余計な活動には金が出せんとか、社員の福利厚生がだんだん手薄になりましたね。そのへんも影響したんじゃないかなと。
最近は地球温暖化の問題がどんどん大きくなって、向こう30年、50年先の温度が示され出した。そこで、森づくりの活動をやることで、企業イメージが変わってくると結び付けて考えるというふうに、企業の森づくりがスタートした時分に戻ってきている気がします。あのときは、京都議定書で6%のCO2削減が日本に求められて、森が吸収源として持っている力が言われるようになったときでした。

─ これまで企業との調整がうまくいかなかったことはありませんでしたか?

福田:3年続けてきたけれど、こちらから引いた例があります。安全を無視されたんです。
どういうことかというと、行事を組まれて、100人規模で関係者が参加されるんです。しかし、名簿も作っていないから誰が来るかわからない、連絡先もわからない。もし途中で活動地に来るまでに怪我したり、事故に遭ったりしていたらどうするのと。当日の森づくり活動の指導のために、遠くからもわれわれのボランティアの方が来てるわけですよ。安全が確認できない状態では、ようできませんと伝えました。

─ 企業との森づくりをすすめるうえで大事にされていることを教えてください。

福田:自分やこの地球上の命は誰に助けてもらっているのか。それは森から出てきているわけです。水であったり空気であったり。
六甲山の例なんか見ても、禿山から森に変えていくには100年かかる。だから、その森を守らないとあかんでしょうと説明しています。

山下:なぜ森づくりをするのかを知ってから、活動してほしい。だから、講義を聞いていただいてから森に入ってもらうようにしています。

お話を伺った山下広行さんと福田正さん

お話を伺った山下広行さん(写真左)と福田正さん(写真右)

─ 本日は貴重なお時間をいただき、どうもありがとうございました。