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市民の森づくり

活動事例

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企業とつながる多彩なしかけ

NPO団体の概要

里山倶楽部は、「里山」という言葉が現在ほど一般的ではなかった1989年から、30年以上にわたり里山保全活動におこなってきました。設立以来、「好きなことして、そこそこ儲けて、いい里山をつくる」という大阪的なコンセプトで、薪や炭の販売をはじめ、できるかぎり無償のボランティア活動ではなく、有償の仕事になるように取り組んできました。最近は、「新しい“里山的”生き方・暮らし方の提案」へとキャッチフレーズを更新し、森づくり活動、棚田保全、環境教育、人材養成など多様な切り口で、それぞれが自分らしいスタイルで里山とかかわることができるように活動を展開しています。

プロジェクトの概要と経緯

里山倶楽部は、企業との連携を積極的に求めてきたわけではありません。活動のベースには、自分たちでフィールドを持って着実に取り組んできた里山保全・森づくり活動があります。

一方で、企業が里山保全にかかわろうとする場合、活動の実績がある里山倶楽部は頼もしいパートナーとなります。また、行政や中間組織が、NPOとの連携先を探している企業から相談を受ける場合も、里山倶楽部は安心してつなぐことのできる団体となります。こうした事情から、里山倶楽部では、企業や行政等からの相談や声掛けをきっかけに、企業との連携プロジェクトが始まることが多くありました。

(1)未来につなぐふるさとプロジェクト:キヤノンマーケティングジャパン(株)との協働

キヤノングループは、生物多様性の啓発・保全活動としての「未来につなぐふるさとプロジェクト」を展開しています。里山倶楽部は、このプロジェクトの連携先としてキヤノンマーケティングジャパン(株)から声がかかりました。
里山倶楽部では、自主事業として里山と棚田の保全再生をおこなっていますので、その定例活動に社員の参加を受け入れることになりました。プロジェクトの趣旨に合わせ、「里山や棚田を守る人がいない!安全なお米と生きもの達を応援しよう!」と呼びかけ、「未来につなぐふるさとプロジェクトin 大阪府~源流米パラダイス」が始まりました。このプロジェクトでは、キャノンからカメラの貸し出しとカメラマンの派遣があり、参加者が撮影した写真を提供するという社会貢献活動も伴っていました。
2013~15年度までは、「未来につなぐふるさとプロジェクト」として協働事業に取り組みましたが、2016年度以降は会社から助成金が支給されるかたちとなり、一般の参加も受け入れるようになりました。平均すると、各回の参加者は10~15人、スタッフ4~5人で対応し、年間4回のプログラムを実施しました。

(2)大阪府アドプトフォレスト制度:三洋商事(株)との協働

大阪府のアドプトフォレスト制度とは、放置された人工林や竹林などを広葉樹林に転換することを目的として、大阪府が企業と森林所有者の仲人となって、地元市町村や活動指導団体などと協定を結び、間伐や植樹、下草刈りなど森づくりの活動をおこなうものです。この枠組みを利用して5年間の協働事業を2回、計10年間取り組みました。
三洋商事(株)の所在地は東大阪市なので、まずは会社の近くでアドプトフォレストのフィールドを探しましたが、場所も団体も見つからなかったので、大阪府から「南の方だけれど里山倶楽部はどうや」と紹介され、マッチングできました。
会社のキャラクターとして「森の住人 ハッパー」がいて、子どもたち向けの環境教育の場面で登場します。そこで、このプロジェクトでは、「ハッパーが気持ちよく住める森にしよう!」と里山林の整備への協力を呼びかけました。ただし、社員は活動に参加することはなく、里山倶楽部はこの事業を受託して、一般の参加者を集めて森づくりをすすめました。平均すると、各回の参加者は15~20人、スタッフ4~5人で対応しました。並行して、社員の子どもたちに森づくり活動を体験させたいという希望があり、そのための体験事業を別途コーディネートして実施しました。

(3)マッチングサイト「ボランティアウェブ」の活用

(公社)日本フィランソロピー協会が運営しているボランティアマッチングサイト「ボランティアウェブ」を活用して、定例活動に参加してもらっています。これは、企業の社員向けに、さまざまな非営利活動団体のボランティア情報をウェブサイトで提供し、社員はサイトから全国のさまざまな分野のプログラムのなかから希望する活動を選んで申し込むという仕組みです。現在、有名企業18社がボランティアウェブを導入しています。
これは、NPO側にとってもありがい仕組みであり、実際にいろいろな企業の社員がボランティアとして参加しています。

実際に活動するにあたっての苦労・工夫

基本的には、企業側からの希望や条件を聞いたうえで、協働で取り組む内容を個別に提案し、話し合いながらすり合わせしています。しかし、参加希望者が100人もいるとか、大型バスで活動場所に乗り付けたいなどのハードルの高い条件がある場合や、現場では育林が必要なのにどうしても植樹を実施したい場合など、森林づくり活動に対する無理解がみられる場合は要望にこたえられないことがあります。
活動日当日は、作業を始める前に、団体の目的や作業の趣旨などを1時間程度の座学で説明して、何のための森づくり活動であるのかを参加者に意識してもらうようにしています。

変化・効果・成果、企業・参加者の声など

「未来につなぐふるさとプロジェクト」の具体的な成果としては、社員のうち1人が入会するくらいでした。しかし、普段ならばフィールドに来ないような人に対して、体験の機会を提供できると考えて事業を継続しました。
以前は、NPOと連携して里山保全に取り組みたいと希望する会社は大企業に限られていましたが、最近は中小企業のなかに、SDGsや森林・里山のことをしっかりと考える会社が出てきた印象があります。そうした企業は、きちんと勉強したうえで活動に取り組みたいという考えから、社員数名が里山倶楽部の講座に年間を通して参加して、環境保全や里山について学んでいるところがあります。

今後の予定・展開

里山倶楽部では、長年にわたって里山保全活動に取り組んできたことから、そうした実践を通して培ってきた多様な資源(人材、資材、フィールド、ネットワークなど)を、新しく里山にかかわる人たちや森で働きたい若者たちに提供したいと考えています。
里山的に暮らす、働く、遊ぶ、学ぶなど、いろいろな里山とのかかわり方がありますが、自分らしい“里山的”生き方・暮らし方を探してみませんか?と提案しています。そのなかで、林業や農業で身を立てたいと希望する人に対しては、チェーンソーの扱い方や無農薬農業などの実践的な学びの場を用意しています。