森づくり活動チェック!環境貢献度etc

『協働の森づくり「森林率日本一からの挑戦」』

久保 寛人(高知県文化環境部循環型社会推進課チーフ(社会貢献推進担当)


久保 寛人さん


高知県の森林・林業の現状

高知県の場合、「環境先進企業との協働の森づくり事業」を文化環境部という環境担当部署で実施しています。森づくり活動を地球温暖化対策の一環として取り組んでいるからです。

高知県は海岸線が約700kmあり、海洋県というイメージを持たれている方が多いかと思いますが、実は森林率が84%と全国一位、人工林率は65%で全国二位であり、日本一の森林県と言っても過言ではありません。観光面では、平成3年くらいから四万十川が日本最後の清流ということで有名になりまして、高知県の名前よりは四万十川の名前の方が売れているような状況です。

森林県である高知県ですが、ここ30年ほどで林業就業者数は4分の1、木材価格は3分の1と低迷しています。平成15年から、県民の目を山に向けてもらうために森林環境税を創設し、県民が森林整備に参加する日として「こうち山の日」という取り組みを始めていますが、山の荒廃は進むばかりでした。

一方で地球温暖化問題が叫ばれるようになり、前知事の橋本大二郎が選挙公約と議会での提案説明で、高知県の森林をフィールドとした排出権取引の検討に強い意欲を示しました。しかし平成17年4月の京都議定書の目標達成計画が閣議決定され、国内の排出権取引は検討課題として先送りされたため、その仕組みを企業のCSR誘致に変更して、環境先進企業との「協働の森づくり事業」に取り組むことといたしました。


協働の森づくり事業の仕組み

「協働の森づくり事業」は、企業から協賛金を提供していただき、それを森林整備、間伐を中心とした森林整備に当てています。

高知県の役割は、事業全体の総合調整(コーディネート)と交流活動のサポートです。交流活動は、社員や家族の方に協定を結んだ森林に訪れていただき、体験型の環境研修・森林保全活動に参加していただいて地域との交流を図っていただこうというものです。市町村(森林所有者)の役割は、協賛金を活用して森林整備を行い、交流活動の実施及びサポートを進めます。このように、企業、県、市町村の3者がパートナーズ協定を結び、「森林の再生」と「地域との交流」を協働して行っています。

「森林の再生」を具体的に言うと、企業から提供した協賛金を活用して、市町村が森林組合等に委託をして間伐を進めています。「せっかく植えた木をどうして伐るのか」とよく質問されますが、人工林は人工的に手入れをしなくては健全に育ちません。森林が本来持つCO2吸収能力や水源涵養といった機能を回復させるためには間伐が必要なのです。

また、協定森林で社員や家族の方による間伐体験、体験型の環境研修も実施しています。その際に地域住民も間伐指導や昼食の提供等で参加してもらい、交流を図ることにしています。昼食の提供では、地元の女性グループ等が地元食材を使っての食事を食べきれないくらいにつくってくれており、そのことにやりがいを感じていただいているようです。


協定実績は24社で活動は様々

協定実績は現在24件であり、私たちの想定以上になっています。その理由としては、CSRの取り組みの活発化、地球温暖化問題への関心の高まりはもちろん、三井物産やキリンビール、電源開発等、早い段階で大手企業と協定することができたことで、この事業全体の信用力も増したのではないかと考えています。

キリンビールは18年の5月に協定を結んでいただいています。協定森林名の「たっすいがは、いかん!」は高知県でのキリンラガービールのキャッチフレーズで、土佐弁で「軟弱なのはダメ」という意味です。

日本たばこ産業は、高知県の前に和歌山県などでも活動をされておりますが、間伐の第一弾として高知県を選択していただいたと理解しております。

損害保険ジャパンは、ユズで有名な馬路村と協定を結んでいただいていますが、社員の家族の方がたくさん来県していただいて、ユズ狩りなども体験していただいています。

四国銀行の協定森林名の「絆の森」は、四国銀行で同じ名前の環境応援型定期を発売されておられて、私どもの事業と連動した企業活動を行っていただいております。

三菱UFJ信託銀行は、交流作業の後にお話を伺いますと、高知、徳島、香川の各支店から社員の方が参加されたようで、「これまであまりできなかった支店間の交流が図れた」と喜んでおられました。

コクヨは、以前より本県の間伐材を活用した机等を販売していただいているご縁がありました。

日本興亜損害保険は、役職員有志によるマッチングギフト制度を活用されており、日本興亜おもいやり倶楽部と協定をしております。

富士通グループは高知県内にあるグループ4社協同での協定となっています。


CO2吸収証書を発行

企業の皆さんに高知県の森林で社会貢献をしていただいているお返しという意味も含めて、CO2吸収証書を発行しています。これは現地調査をして、実際に間伐した実績に応じて京都議定書の方式に準じてCO2吸収量を数値化し、その数値を証書としたものです。地球温暖化対策への貢献を客観的な数値で評価できるため、環境報告書やCSR報告書等でアピールしていただくことができると思います。

昨年8月1日、初めて3社に対して発行いたしました。その時のCO2吸収量は合計で1,114tでした。樹種も林令も違うのでかなり乱暴ですが、平均すると1haあたり約10tの吸収量ということになります。

おかげさまで非常にマスコミの注目も高く、昨年10月下旬にNHKの朝の全国ニュースで取り上げていただきました。また他の自治体や企業からの問い合わせも多くなっています。

モア・トゥリーズという、音楽家の坂本龍一さんが代表を務められている団体は、このCO2吸収証書を活用してカーボンオフセットを検討されておられます。予定では、坂本さんのCDでオフセットされるよう検討が進んでいるということです。


CO2吸収証書


バイオマスによる間伐材有効利用の取り組み

バイオマスによる間伐材有効利用策にも取り組んでいただいています。

矢崎総業では、間伐材を利用したペレットを年間1,800t製造する予定で、現在工場の整備が進められています。

住友大阪セメントでは、自社工場の発電施設で、年間8,700tの地域未利用材(間伐材、製材端材、林地残材等)の利用を予定されています。

カワサキプラントシステムズでは、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の実証実験で年間1,900tの間伐材の使用を予定されています。

また本県ではCO2削減量の認証にも取り組んでいます。県内の発電事業者で石炭の代わりに木質バイオマスを使用することで、石炭が減った量の分をCO2削減として認証することにしており、平成20年度には証書という形にしたいと考えています。


間伐未実施の森林(左)と間伐実施済みの森林(右)


参加企業間の連携も

今後も森林率日本一や吸収証書等をアピールしながら、誘致活動を推進していきます。また、来年5月には協定期間が満了を迎える企業も出てきますので、期間満了後もこの関係を良好に継続できるよう、フォローアップ体制を市町村と連携して強化していきたいと思っております。

間伐材の利用も、現在進められているバイオマス燃料としてだけではなく、様々な形で進めていきたいと考えています。例えば、日本たばこ産業にはコースターをつくっていただいたという事例もありますので、協働の森に参画いただいている企業のみなさんにも、このようなノベルティとして活用をお願いしていきたいと思っています。

さらには、せっかくいろんな業種の企業が24社も集まっていますので、企業間の連携を図りたいとも思っており、昨年の9月1日には土佐林間会議を開催して、企業のトップの方に集まっていただき、ざっくばらんに環境問題について語り合っていただきました。

高知県は首都圏から遠い、というイメージがあると思います。しかし、飛行機に乗っている時間は1時間10分。大阪からは高速道路を使えば4時間かからずに高知県に入れます。ぜひ、本日を機会に高知県にも目を向けていただいて、ぜひ、また高知県の森林整備へご協力をいただければと思います。

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