森づくり活動チェック!環境貢献度etc

『「企業の森」事業 実践的活用のヒント』

佐々木 正顕 (積水ハウス㈱ 環境推進部 課長)


佐々木 正顕さん


「積水ハウスの森」での活動

当社では、和歌山県にご提案いただいて、中辺路にあります企業の森「積水ハウスの森」で森づくり活動を行っております。その活動の様子は、和歌山県のホームページからも見ていただくことが出来ます。「自治体がそこまでしてくれるんだ」と企業としてはビックリいたしました

「積水ハウスの森」には、かなりの急斜面ですが、5,500本の苗木を2年間にわたって植樹しています。1年でかなり雑草等が生えてきますので、下草刈りも行っています。下草とは言っても、カラズザンショやタラといったトゲトゲの灌木などもたくさんあります。参加した若い女性社員は「これって草じゃないじゃん」なんて言っていましたが、傷だらけになりながらも、楽しんで活動を行っています。

単に観光バスで現地に入って、植林をして会社に戻るだけでは面白くありません。「なにか地域の思い出に残る活動をしようという」ということで現地の森林組合や自治体の皆さんと相談して、様々な仕組みも用意しました。例えば、クズの篭づくりを現地のお母さんたちに教えていただいたりしています。また食事も、コンビニの弁当を買って持っていくのではなく、和歌山県にはめはり寿司という有名なお寿司もありますので、現地のお母さんたちにそういったものを用意していただいて、現地に多少なりともお金を落としてくるようにしております。



積水ハウスの森


企業にとって大事なのは社会に対するアピール力

和歌山県には企業の森について調査をしたデータがあり、企業がどういうことを求めて企業の森に参画してくるかも分類されています。それを見ると、「地元のサポート体制」「行政のサポート」「費用負担が少ない」ということを企業サイドが望んでいることが分かります。

しかし企業にとって一番大事なのは、どの自治体に行ってどういうではなく、その取り組みをいかに社会にアピールしていけるか、です。いま、たくさんの企業が中国で植林等の活動をして、環境報告書で報告したりしていますが、お金を出しているわりには、社会からはあまり評価されていません。社員でさえも知らなかったりします。なぜなら、どこの会社も同じことをやっているからです。これでは社会に対するインパクトもないし、イメージアップにもなりません。ですから、これから大事なのは活動の個性化です。


自治体に求めるのはコーディネートではなくデザイン力

今日、いくつかの自治体のブースを拝見してきましたが、そのほとんどが「地権者から企業が土地を借りて、森林組合がその活動をサポートします。自治体はそれをコーディネートします」といったイメージでした。実はコーディネートという言葉は、ビジネスの世界では、あまり流行らないキーワードです。ニーズを求めている人とそれが欲しいと人がフィットしている場合はコーディネートでもよいのですが、極めて市場が複雑化していて、何が欲しくて何がいらないのか、あるいは本当に欲しいものが何かが分からない段階では、そんなに簡単にコーディネートは出来ないからです。

いま一番求められているのは、win winの関係で、参加者全員が利益を得られる環境をデザインすることです。ですから自治体の大きな役割は、単なるコーディネートではなく、複数の組織がコミュニケートして持続可能な社会をつくっていくために、どのような価値を創造していくかというデザイン力なのです。


企業も自治体もオリジナリティを持つことが大事

今日のフェアのタイトルには「サステイナブルな循環型社会の実現」と出ていますが、多くの企業や自治体は、大抵が環境問題、それも森林保全をもってサステイナブルと言っています。でもサステイナブルとは、そんなに狭いものではありません。

例えば私どもは住宅メーカーですから、たくさんの木材を使います。社会が住宅メーカーに対して「サステイナブルな社会をつくるために役割を果たしているか」という視点は、インドネシアや中南米、ロシアといった木材調達先の生態系、現地の方々の暮らしまで配慮して木材を調達しているのか、ということまでもが含まれているのです。それにたいして「こうですよ」と説明できて初めて、「私たちはサステイナブルな社会の実現に貢献しようとしています」と説明できるわけです。

もちろん森林環境保全も重要なテーマではありますが、もっと広い視野から自分の会社の活動の個性を再構築することが大事だと思います。

差別化やブランド化を考えるときには、オリジナリティが一番重要な要素です。自治体の皆さんのブランドはなんでしょう? 「豊かな森林」なんていうのは当たり前ですよね。それだけではブランド化にはなりません。

よく車に乗って走っていると市町村境に「〜の町」って出ていますが、あれはタグラインといって、その企業や自治体の特徴や取り組みを簡潔に示したメッセージです。でも、それだけを読んで、どこの町のことだか分かるでしょうか。本当に自分のところの個性は何で、ブランド価値は何かということを考える必要があると思います。


「5本の樹」の考え方と「積水ハウスの森」

「ならば積水ハウスはどうなのか」ということですが、私たちには「5本の樹」という考え方があります。「鳥のために3本、蝶のために2本、その地域にあった自生種・在来種を植えましょう」と、実際に住宅づくり進めるときに、お客さまにお話ししながら庭づくりをしています。

自生種・在来種から選んでいるのは、樹木によって生き物に対する影響が違うからです。例えば外来種のヒマラヤスギは、利用できる生き物は20種類くらいしかいません。それに対してクヌギは、落葉した葉を使うとか樹液を吸うとかで、300〜600種類の生き物が利用することができるそうです。その木にどういった鳥や蝶が来るといったことをお客さまにお伝えしています。また、シジュウカラが年間に食べる虫の量は、3cmくらいの毛虫に換算すると、10万匹以上になります。そうなると、シジュウカラが利用するような木があれば、毛虫の駆除のために過度に農薬をまいたりする必要がなくなるわけです。

どの住宅メーカーでも造園緑化事業を行っていますが、私たちはこのような考え方でからコンセプトをつくって、それに基づいて造園緑化をやっています。そして、そのような庭が増えることで、愛着が湧く、風格のあるまちづくりが出来ると考えています。

そして「積水ハウスの森」でも、和歌山県には「昔からあって、それを植えることで地域の生き物たちが豊かになるものを植えさせてください」とお願いしました。地権者の方々も、快く認めてくださいました。この森が育っていけば、「5本の樹」のある一軒一軒の庭と里山が、まるで庭石を踏むような鳥などの生き物の渡り場所になり、自然が豊かになっていくことでしょう。そうなっていけば、時として「日本の森林・林業をダメにした」と言われるハウスメーカーですが、自然環境に少しでも恩返しが出来たことになるのではないかと考えています。

あるセミナーで、C.W.ニコルさんと一緒にパネリストをすることがあったのですが、その後にくださったお手紙には、「Trees need birds. Birds need trees. We need both.」と書かれていました。「木には鳥が必要。鳥には木が必要。私たちには全てが必要」ということです。



C.W.ニコルさんからのお手紙


森林保全が意味のある活動であるからこそ個性が大事

これまで小うるさいことを言ってきましたが、それでも森林保全をすることは、私たちの心情や心の面で大事な活動であること、環境の面ですごく意味のある活動であることは間違いありません。だからこそ、ぜひ参画する企業の皆さんも、それを提案する自治体の皆さんも、ぜひ独自性、個性を重視してください。お互いの良いところを出しながら、切磋琢磨しながら持続可能な社会に何らかの役割を果たせるようになっていければと思います。例えばNPOを巻き込んだり、あるいはこれからリタイアしていく団塊の世代の方たちを巻き込んでいくというアイデアもアリでしょう。

企業の森づくりの中で社会を変えるために出来ることは、すごく奥の深いものだと思っています。ですから、どこでやっても同じ、と言うことではなく、自分たちらしい参画の仕方を進めて行ければと考えています。

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