『企業との連携 ~公益実現の新たなパートナー~』
勝又 章 (大阪府 環境農林水産部 みどり・都市環境室 森林課 課長補佐)
勝又 章さん
大阪府の森林の現状
大阪府の森林面積は全国で最少で56,500haですが、大阪平野を囲むように位置しており、大阪にとっては貴重な緑の屏風となっています。2001年の日本学術会議による森林機能の評価から試算しますと、大阪府の森林は年間1,568億円の公益的価値があり、府民1人あたり年間2万円程度の便益があることになります。
ところが、木材価格が昭和55年当時の半値以下になったり、地形等の高コスト等から外材に太刀打ちできずに、林業が衰退しています。また8割以上が1ha未満の零細所有者ということもあり、府の森林のうちの特にスギ・ヒノキ人工林が放置されてしまっています。また、タケも使用用途がなく、放置されたものが拡がっています。
人工林が放置されますと、どうしても林内に光が入らないために、下草が生えず、落葉もないために土壌浸食がおこり、災害防止などの公営的機能が著しく低下するおそれがあります。また、手入れ不足の森林は、台風によって風倒することがあり、倒木は土を掘り起こしますので災害発生を誘引しやすいということになります。また放置された竹林は、その旺盛な成長力によって他の樹林を被圧し、破壊してしまっています。それによって多様性が喪失しているとともに、土砂崩れ等との関連も指摘されています。
大阪府の森林の現状
放置森林対策行動計画を策定
放置された森林が主な公益的機能による損失は、年間約130億円と試算されています。これが現状の水準で移行すると、5年後には230億円のオーダーにまでなる可能性があると考えています。
したがって、公益的機能の低下を防止し、良好な状態で森林を維持していくことが喫緊の課題となっているのです。
そこで府では、「未来へ引き継ごう 生命育む大阪の山」ということで、先般、放置森林対策行動計画を策定いたしました。この計画では「水を育み災害を防ぐ森」「地球温暖化防止に貢献する森」「生物多様性の森」を目指し、「所有者の理解のもと、森林を地域社会の共有財産と捉え、地域社会全体で支える」ということで、府民協働で行うことに力点を置いています。
放置された人工林
アドプトフォレスト制度
府民協働で行うからには府民の総体でもある企業にもコミットメントしようということで、「アドプトフォレスト制度」を創設しました。キーワードは「えエコと」と「評価」。「ええことをやったら、もっとええように評価しよう」ということです。
この制度の目的は、企業等の環境CSRの取り組みにより、放置された森林や竹林の広葉樹化、複層林化等を促進していくことです。実施の流れとしては、企業や森林所有者等の関係者に活動計画を作成していただいた上で府が企業と森林をマッチングし、協定を締結していただいた上で森づくり活動に入っていただいています。
参画のメリットとしては次のようなことが上げられます。
価値
● 課題の提示(地球温暖化や生物の多様性等)と企業のイメージ
● CO2吸収量の評価
● 土砂集出防止等の効果
● 社員の環境意識の醸成
利便性
● 福利厚生・社員研修の場としての活用
● 公共施設との連携・調整
● 指導員の派遣・調整も利便性
コミュニケーション
● 森に会社の名前がつく
● 森づくり活動の費用対効果の算定
● 広報活動(府のホームページ等)
● 地域交流
コスト
● 時間コストの削減(①土地所有者・地元との調整・斡旋、②活動プログラム策定・調整)
● 報道提供
例えば、企業が2haの森林にクヌギ・コナラを植栽した場合の費用対効果を算定してみますと、単年度で374万円程度、これを5年間継続すれば約1900万円の便益が発生します。一方でその経費は、5年間継続した場合は228万円程度。つまり、200万円程度で2000万円程度の便益を生み出すことになります。
実例ですが、第一号としてシャープに岸和田市の神於山で実施していただいたものです。これはネザサの生えていたところに広葉樹の植栽をしていただきました。
次世代育成機能を付加したアドプトフォレスト「冒険の森」
アドプトフォレスト「冒険の森」は、アドプトフォレスト制度を拡充して、企業の森づくり活動に一般公募の子供たちの参加による次世代育成機能を付加したもので、キーワードは「次世代」「感動」です。府が地域の子供たちに呼びかけ、企業と一体となって環境保全と次世代育成に取り組もうというものです。
府では、大阪教育大学のご協力をいただきながらキッズレンジャーズ・スクールのプログラム開発を行っており、プログラム提案をさせていただいています。また、堺の刃物協同組合のご協力を得ながら、子供用のノコギリをご用意させていただいています。子供と一緒にボランティア活動を行う場合は、こういったものを府からお貸ししています。
冒険の森づくりでは、何をねらいとするか、また当日のタイムスケジュール、安全説明等、府が行わせていただく部分もございます。また場合によってはNPOの協力を仰ぐという調整も行っております。
冒険の森
「生駒の森運営協議会」
大阪府には、みんなで生駒山系を守っていこうという「生駒の森運営協議会」が設立されています。この協議会は、特に地域の営業所単位で入っていただくという利用の仕方、または大学などにも入っていただいているのが特徴です。
この活動の中で「府民の森づくり活動を支援したい」という話が出たことをきっかけに創設されたのが「森の貯金箱CO2」です。キーワードは「地域」「十八番」。府民啓発やボランティア活動のバックアップと併せて、企業の得意なところを利用しようというものです。
「森の貯金箱CO2」は個人を対象とした認証システムです。基本的に1ha当たりの炭素固定tを考え、例えば「苗木を1本植えていただいたら、2kgのCO2が貯金されます」ということで、活動に応じてCO2ポイントを通帳に記入させていただき、マイレージのように貯めていただこうというものです。そして、貯めたポイントに応じて、参加企業や大学から協議会に提供していただいた景品がプレゼントされます。例えばCO2が50kg貯まったときにはボールペンやミニタオル、300kgならば再生炭、500kgならばパソコン教室の受講といったものがプレゼントされます。
大阪府では、企業の独自性等を踏まえながら共に計画し、共に行動していきたいと考えております。なにとぞよろしくお願いいたします。


