森づくり活動チェック!環境貢献度etc

森林分野におけるCO2 活動の拡大と評価手法の活用

宮林 茂幸
(東京農業大学地域環境科学部長・教授 森づくりコミッション全国協議会 運営委員長)



企業のCSR 活動としての森づくり活動の拡大について、その動きを推進するツールとして、評価手法をどのように活用すればよいか等、今後の方向性や可能性について、次のディスカッションにつながる議題の提供もいただきました。


 宮林 茂幸(みやばやし しげゆき)

  東京農業大学 地域環境学部長・教授。森づくりコミッション全国協議会 運営委員長
   1953 年長野県生まれ。専門は、林政学、林業経済学、森林レクリエーション論、地域振興。
   林業経済学会理事、大日本山林会理事、日本ナショナル・トラスト協会評議員、NPO
   豊葦原プロジェクト理事長、東京都森林中央審議会委員、「美しい森林づくり全国推進会議」事務局長、
   平成19 年度「企業等の森林づくり活動に対する評価手法の開発」委員会座長等。博士(農学)。
   <著書>『森林レクリエーションとむらおこし・やまづくり』(全国林業改良普及協会)ほか。

企業の森林づくりの追い風となりうるCO2 削減クレジット

ご承知のように、7 月以降の世界金融恐慌による危機が急速に日本にも降り掛かっており、この状況は企業にとってはかなり大きな問題だろうと思います。こんな状況のなか、いくら「森づくり活動を一緒にやりましょう」と言っても、その理論がキッチリ固まっていないと、なかなか参加してはくれないでしょう。とはいえ、いままでの市場原理を中心とした大きな流れから、環境を中心にした生産力に展開するという大きなテーマはありますので、やはり「環境」というキーワードをしっかりと捉えておくことが大切だと思います。もうひとつ、私たちの先祖がつくってくれた、あるいは受け継いできた70%にわたる森林をどう位置づけ、これをきちんと将来につないでいくかという大きな枠組みのなかで、「これからは国民総参加の森林づくりに入っていきます。その現状はこうなっています」ということをきちんと出していく必要があると思います。

小林先生の報告にもありましたが、CO2 の削減・吸収がクレジット化されるということは、このことの追い風になるでしょう。企業も新しい枠組みの戦略として受け取ってくれる可能性がありますし、そのなかに森林を大きく位置づけることはできるはずです。おそらくCO2 のクレジット化については、今後1 歩も2 歩も進んだ形で展開されるだろうと思います。


企業との融合と森林・林業の将来像を同時に描きながら

そうなってきますと、逆に私たちが具体的にどうそれを受け止めていくかがポイントになります。一部自治体ではすでにスキームづくり行われていますが、それをどう標準化していくのか、また発展的な展開をつくっていくのかとなると、まだ少し見えてきていません。こういった問題をどう整理し、展開していくかが、大きなポイントだろうと思います。多様な取り組みの形はあるはずですし、CO2認証のプログラムを認定していこうという動きも出ています。ここは地域、企業あるいは学校が持っているアイデアをきちんとつくりあげていく必要があるだろうと思います。


宮林 茂幸さん



ただし、このCO2 の問題について私が心配しているのは、あまりにもその方向に進んでしまうと、地域にとって森林とはなんだったのか、森林・林業の基本的な位置づけはどうなるのか、ということを見失ってしまう危険性があるのではないかということです。

わが国には森林計画制度がありますので、それとの整合性をとりながら、地域の森林・林業の将来像を明確に示しながら、プログラムづくりを進めていく必要があるのではないかということです。企業との融合を図っていくと同時に、本来の林業問題をどう位置づけるのかも忘れるわけにはいきません。企業だけが森林・林業、山村問題を解決するわけではありません。本来の森林保全、そして社会との関係などとの融合をどう取っていくのかも考えていく必要があるのではないでしょうか。

2つの評価手法と今後の森づくりコミッションの位置づけ

今日は評価手法について議論をしてきました。定量的評価と定性的評価の2 つの方法があるということでしたが、基本的には使いやすくて中身は信頼性のあるものである必要があります。また、その中身をきちんと我々が認識して平準化・基準化していくことも必要です。特に定性的評価については、森林・林業が本来持っている役割をチェックしながら、あるいは活動の持続的な展開や地域の発展とリンクしながら取り組みを発展させていく評価手法として位置づけていく必要があります。そのような中で昨年、異なる2 つの観点からの評価手法を作成していただいたわけです。

この評価ソフトを用いた認定をどうするかという点では、現在進めている「森づくりコミッション」がありますので、そこで全国的なシステムの枠組みをつくることができるのではないかと考えています。皆さんのこれからの検討材料として、そういった展開も図っていただければ幸いです。

評価に関しては、信頼性があって誰もが使える内容であることがひとつ、そして評価手法及び内容のさらなるレベルアップと地域の発展のために使えるものであること、さらに標準化や認定といった側面では「森づくりコミッション」を全国的な中核的機関として位置づけてはどうかと思います。

森づくりコミッションの位置づけに関連して、もうひとつ付け加えることは、最近、県や市町村独自の森林環境税のようなものが創設されています。企業の森林づくり、美しい森林づくり推進国民運動、さらにはカーボン・オフセットといった展開があるなか、今後も森林に対するアプローチはどんどん多様化していきます。対象は同じ森林で、森林・林業関係者以外の幅広い社会一般や企業なのですから、これらを縦割りにするのではなくて、上手く総合化して森林の社会化ができるような枠組みを考えていく必要があり、それを森づくりコミッションが担っていくのがよいと思っています。

森林を環境財として捉え、様々なセクターが参加する新たな枠組みづくりを

そして最も大切なのは、森林を県民、地域の人、あるいは国民全体が、社会生活の中でどう位置づけ、再編成していくのか、ということです。木材生産はもとより、環境財という位置づけを再度認識し、新しい枠組みへの転換を考える必要があると思います。

諸外国にとって森林は、国境政策、国土安全保障といった観点からも必要なものでした。特に、そこに村があることによって国の安全が守られていたわけです。日本には陸上に国境はありませんが、国土を守るという意味では、諸外国と同じように中山間地域が最前線と言えます。ところが今は、ここが荒廃して大変なことになっています。そういった意味でも、森林を国全体の共通の財産として位置づけながら、みんなで守っていく姿勢が必要ではないかと思います。

日本は自然資本の豊かな国で、どこの国と比べても見劣りすることはありません。またこの自然資本は、私たちの生活に必要な水や多様な文化を含めた社会共通資本を生み出しています。かつてはこれらが循環的につながっていたのですが、そこに巨大な産業資本が入り込んで大きくなり、いびつになってしましました。この3 つの資本をもう一度上手く組み合わせていくことこそが、日本のこれからの道ではないかと思います。そういった意味からも、企業を含めた様々なセクターが参加しての森づくりを、いまこそ新たな枠組みを意識して展開していく必要があると言えます。

皆さんには、今日の研修を糧にしていただいて、新しい森づくりの展開を図っていただきたいと思います。

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