府民参加の森林づくり
~京都モデルフォレスト運動の取り組み~
川戸 修一( 京都府 農林水産部 モデルフォレスト推進課 副課長)
全国で、森づくり活動の環境貢献度評価を組み込んだ「企業の森づくり」活動支援が進められている中、特徴的・先進的な取り組みを行っている京都府による取り組み状況をご紹介いただきました。
府民みんなで京都の森を守り育む「京都モデルフォレスト運動」
京都府でも人工林や広葉樹林の荒廃が進んでおり、また京都は竹林が多いのですが、この竹林も放置されている状況が続いています。ここ2 ~ 3 年はマツクイムシの被害が増えていますし、カシノナガキクイムシという、比較的大きなシイやカシ等を食害する害虫がここ15 年くらい被害をもたらしていまして、景観上も問題になっているところです。
このようなことから私どもでは、森林所有者や森林組合、行政を中心とした森林整備の取り組みだけではなく、府民みんなで京都の森林を守り、木材の利用を促進する取り組みが必要ということで、平成17 年10 月に「京都府豊かな緑を守る条例」を制定しました。森林所有者、地域住民、企業、大学と行政等が連携しながら、森林や里地、河川等の環境保全の実践活動、あるいはよりよい地域づくり運動を府民運動として展開していこうということを、「京都モデルフォレスト運動」と名づけて取り組んでいるところです。
その内容は様々ですが、森林資源を有効利用しようとか、里山を保全しよう、景観をキッチリと形づくっていこう、ほかにも文化、観光、エネルギー等、いろんなテーマ設定をして、地域ごとに取り組みを進めていこうとしています。
それにあたって推進母体が必要だろうとなり、平成18年の11 月に(社)京都モデルフォレスト協会を設立しました。京都だけでなく、日本を代表する分野の皆さんに賛同をいただき、現在では会員が385 人、約100 の企業が会員となっています。
現在は3 名体制で協会を運営しておりまして、事業費は年間約5000 万円。理事長は京都銀行の頭取である柏原康夫さんということもありまして、全国で20 を超える地方銀行が地域の森づくりに取り組んでおられるようで、その取り組みのネットワーク等も幅広く呼びかけていただいています。
協会の役割としては、森林所有者、市町村、森林組合等と連携して、活動フィールドを企業、団体等に紹介し、それをサポートするということです。もちろん資金もしっかりと管理して適正に森づくりに使っています。
森林吸収量認証の仕組み
●条例に基づく削減計画書に森林保全の数量を算入
京都府では平成17 年10 月に農林部局が「京都府豊かな緑を守る条例」をつくりましたが、同年12 月には環境部局で「京都府地球温暖化対策条例」をつくりました。国は6%の削減を目標にしていますが、京都では10%の削減をしよう、そのために府民の皆さんにご協力をいただこうという、高いハードルを設けた条例を制定して取り組んでいます。
この条例では、企業等に温室効果ガスの削減計画書を出していただく枠組みにしています。これは全ての事業体が対象ではなく、例えば年間にして原油換算で1500kl 以上のエネルギーを消費している事業体、あるいはバスやトラックを100 台以上所有している事業体といった規模の事業体を対象にしています。平成20 年~ 22 年の計画では、257 事業体が該当しています。
その削減計画書には、補完的な措置として、森林保全・整備や京都府内の木材を利用していただいた場合のCO2吸収量や削減量を、盛り込んでいただけるようになっています。
●京都モデルフォレスト協会が吸収量を認証
森林の保全・整備については、京都モデルフォレスト協会が企業からの申請に基づいて、「森林吸収量認証」という、CO2 吸収量を算定した計算書を発行し、CO2 吸収量を認定する仕組みになっています。また木材利用としては、京都府産木材認証制度、別名ウッドマイレージCO2認証制度を設けています。木材の輸送距離が短かければ輸送にかかるCO2 排出量も少なくなるわけで、それを一定の計算式に当てはめて、どれだけCO2 が削減されたかを計算し、その分だけ盛り込むことができるというものです。
CO2 吸収量は、森林面積×幹材積×枝根係数(拡大係数)×容積密度×炭素含有率× 44 / 22 で算出しています。例えば30 年生のスギ1ha を間伐した場合は、約11tのCO2 吸収になるという計算書を協会から発行することになります。同じ場所では1回きりの認証とし、竹林は認証の対象にはしていません。
削減計画書の対象になっていない小規模な事業体にも、認証要望があれば制度に基づいて計算書を発行させていただいています。
認証件数がいまのところ5 件で、これはモデルフォレスト運動の枠組みの中でやっておられる企業等からの要請に基づく認証です。森づくりをいっしょにやっているものですから、活動内容や面積は協会も把握しているので、割合スムーズに認証しています。モデルフォレストの枠組み以外の企業からの要請は今のところありませんが、そういうところは現地の測量とか写真等にもとづいて判断しながら認証をさせていただくことになるのかなと思います。
まだ始まったばかりなので、今後事例は増えていくことと思います。認証するにあたっての手数料は取っておりません。
京都モデルフォレスト協会の取り組み
●ボランティア活動推進・普及啓発・情報発信
協会の取り組みを若干紹介させていただきます。
例えば体験教室を行って、山の役割とか山に馴染んでいただくといった取り組みを行っています。また、こういった活動には各企業や団体のリーダーの役割が重要になりますので、リーダーを養成する講座等を開催して、なるべく自立した活動を目指してもらうようにしております。京都は海がないと思われている方もいるかと思いますが、日本海に面していますので、漁業関係者の森づくり活動も進められています。
普及啓発としては、緑の募金の街頭でのPR や環境フェスティバル等でのPR を行っています。ホームページや広報誌も非常に重要な媒体となっており、『以森伝心』という広報誌を年3回発行しています。これは林業関係広報コンクールで最優秀賞を受賞しました。ホームページでは、新しい情報をこまめに更新していくようにしています。
●企業との協働と推進協議会
現在府内では、19 カ所で22 の企業等に森づくりの取り組みをしていただいています。さらに現在、約10 の企業等と調整をしています。場合によっては大学やNPO と一緒に活動を行う事例もあります。
資金提供ですが、今年の見込みは1,200 万円です。多いところですと年間1,000 万円を超えるところもあれば、数十万円のところもあります。とりあえずボランティア活動だけをやりたいと言うところもあります。
これらの取り組みは「森林利用保全協定」という応援協定を結ぶことが基本となっており、調印式も行っています。なるべく多くの方と役割分担をしながら、森林づくりを進めていきたいと考えています。
「京都府豊かな緑を守る条例」では、知事が森林利用保全の重点区域を指定しています。企業の森林づくりでは、市町村からの提案に基づいて基本的には重点区域内のフィールドを紹介しています。作業内容としては、植林は少なくて、間伐や竹林整備、広葉樹整備といったいろんな目的を持って、みんなで相談しながら行っています。
これは森づくりコミッションにもつながりますが、モデルフォレスト運動の特徴的な取り組みとして、各地で森林整備の推進協議会を立ち上げています。
例えば西山では、ワーキング会議や専門部会を設けて、京都大学や森林組合、地域住民、様々なNPO や企業に参画していただいて協議会をつくっています。現在は企業が取り組んでいる森づくりの19 カ所のうち、3 分の1 に協議会的なものができています。候補地の選定に当たっては、十分地元の協力が得られるところを選んで森づくりを行っています。
「森林利用保全協定」の期間の基本は10 年です。短いところでも5 年としています。その後も異存がなければ1 年ごと自動更新をして、継続的な取り組みにしていきたいと考えています。
●国際的な取り組み
もともとモデルフォレスト運動は、1992 年にリオデジャネイロで開催された地球サミットでカナダが提唱した環境保全運動です。国際モデルフォレストネットワークという緩やかなネットワーク組織があり、私どもは今年の3 月にネットワークに参加しておりまして、現在は世界19 カ国40 地域が参加する取り組みになっています。
せっかくそういうネットワークに入ったので、4 月にはカナダで一番大きな森林面積をもつケベック州と京都府が森林環境保全等に関する合意書を締結しました。また京都モデルフォレスト協会とケベック州木材製品輸出振興会とも覚え書きを取り結びました。今後も、こういった国際的な取り組みもしていこうと考えておりまして、カナダにも「京都議定書にぜひ参加してください」と言っているところです。
今後の課題
これらの取り組みを始めてまだ3 年ですが、企業参加による森林づくり活動の拡大、府民の主体的な森林づくり活動への参加促進、国際連携強化、課題はいろいろあります。
最近では企業の経営環境が特に厳しくなっていますが、一方では私どもの京都は年間4,000 万人~ 5,000 万人の観光客においでいただいていますので、ホテルや旅行会社等が行っているポイント制度を、お客さまの理解を得ながら森林整備に使っていただくために寄付をしていただくという事例も出てきております。
森林の整備は本来、森林所有者や森林組合が頑張ってもらわないとなかなか進みませんが、少しでもそういった活動の一助になればということで、モデルフォレスト運動を推進しているところです。
(質疑応答)
Q 資金提供はだいたいどれくらい?
A 現在は22 企業等ということですが、今年の見込みは1200 万円です。多いところですと年間1000 万円を超えるところもあれば、数十万円のところもあります。とりあえずボランティア活動だけをやりたいと言うところもあります。
Q 吸収量の計算で現地調査は?
A 認証件数がいまのところ5 件で、これは枠組みの中でやっておられる企業等からの要請に基づく認証です。森づくりを一緒にやっているものですから、活動内容や面積は協会も把握しているので、割合スムーズに現地調査をせずに認証しています。枠組み以外の企業からの要請は今のところありませんが、そういうところは現地の測量とか写真等にもとづいて判断しながら認証をさせていただくことになるのかなと思います。


