森林を活かした地球温暖化対策
~森林県高知での取り組み事例~
高橋 宏和(高知県 文化環境部 環境共生課 主幹)
全国で、森づくり活動の環境貢献度評価を組み込んだ「企業の森づくり」活動支援が進められている中、特徴的・先進的な取り組みを行っている高知県による取り組み状況をご紹介いただきました。
日本一の森林県における森林を活かした地球温暖化対策
高知県では、平成20 年4 月に第二次環境基本計画を策定しました。平成20 年から22 年までの3 年間の計画ですが、平成22 年に県のCO2 の排出量を、基準年の1990 年から6%削減することとしています。森林のCO2吸収を中心的な削減要素としており、森林を活かした地球温暖化対策をしていこうとしています。
高知県の森林率は全国一の84%で、65%は人工林となっています。高知県というと海や川のイメージが強いと思いますが、実際のところ県内のほとんどは森林であり、その大部分が人工林です。しかし、全国と同じように、担い手の減少とか木材価格の低迷といったことで、森林の整備がなかなか進まず、多くの森林が荒廃しているという状況です。
森林の公益的機能が十分に活かされていないということは、私たちの生活自身にも影響があるということで、高知県では早くから森林整備に対する対策を行い始めています。平成15 年からは森林環境税ということで県民税に500 円を追徴し、県民の皆さんからお金をいただきながら森林の整備を進めています。そして平成17 年から、企業等の取り組む森づくりということで、「協働の森づくり」事業をスタートさせることとなりました。
森林整備と地域交流が柱の「協働の森づくり」
「協働の森づくり」は、基本的には企業と市町村、高知県がパートナーズ協定を結んで、森づくり事業を行います。協定では、協定期間やフィールドの森林、どんな活動をするのかといった概要を定めることになっています。協定期間は3 年以上を条件としています。また、企業から協賛金という形で森林整備費用をいただくことになっていますが、その費用に応じて協定森林の面積等を決めています。
事業の目的としては、もちろん企業との協定を結ぶことで森林整備費用をいただくことがありますが、もうひとつ、企業の社員の方と地域の方との交流を積極的に深めていただきたいということも、大きな柱として事業のなかに位置づけています。こうしたつながりを通じて、森林にとどまらず、地域の環境教育とか、新入社員の研修といったことまで活動が広がっている例もあります。今後も単に森林の整備だけではなく、企業と地域が協働で取り組むための仕組みを進めていきたいと思っています。上手くいけば地域の活性化にも貢献することができるのではないかと考えています。
最初にパートナーズ協定を結んだのは三井物産で、平成18 年5 月23 日でした。そこから現在までに33 の企業・団体と協定を結んでおります。1 企業で2 件の協定をしているところもありますので、協定件数は35 件になります。
CO2 吸収認証制度
●「協働の森づくり」のもともとの発想はCO2 取引
そもそも「協働の森づくり」事業は、平成17 年に京都議定書が発効され、森林のCO2 吸収量が削減量に組み込まれたということ、またCDM 等、様々な制度が生まれてきたことがあり、森林のCO2 吸収量に価値をつけて企業の方に買っていただこうという構想から事業の検討をしたことから始まりました。しかし当時はそういった制度が動くような環境ではなかったため、事業の内容を、CO2 を取り引きするのではなく、削減しつつも企業のCSR として協力していただこうという仕組みとしてスタートしたのです。
そういう経緯がありますから、「CO2 吸収認証制度」は、当初からメニューの中に取り入れることを前提として考えていました。平成18 年度にCO2 吸収専門委員会を設置し、本日ご講演をいただいた小林先生に委員長になっていただいて、制度設計をしていただきました。
●「CO2 吸収認証」制度の目的
CO2 吸収証書は、企業のCSR 活動のPR 等に活用していただくことを目的に発行しています。これは定量的評価ということと共に、定性的評価ということになるのかもしれません。また、CO2 吸収証書を活用したカーボン・オフセット等の取り組みも出てきていまして、将来的にはそういった活用の仕方にも広げていきたいと考えています。
●現地調査、吸収量を算出してCO2 証書を発行
「CO2 吸収認証」制度は、「協働の森づくり」事業で協定を結んだ森林のうち、実際に整備された森林が認証の対象になり、CO2 吸収証書が発行されます。
証書発行までの流れとしては、まず整備された森林に対して県が現地調査を行い、吸収量を算定します。この現地調査が高知県の特徴になると思いますが、まず調査箇所は樹種と林齢ごとに、例えば樹齢40 年のスギならば1 カ所、樹種や林齢が異なる場合にはそれぞれ1 カ所ずつ設定します。現地では樹高を50 本測定し、平均樹高を算出します。測定自体は機械を使うので特別な技能が必要なわけではありません。そして、高知県の収穫表では成長の良し悪しが5 段階で分かれているのですがの、平均樹高と収穫表と見比べて、どの収穫表が現地に適応するかを判断し、その収穫表の当該林齢の成長量をその森林の成長量として、吸収量を算出します。吸収量の計算自体は、吸収量=蓄積増分×拡大係数×容積密度×炭素含有量× CO2 換算係数ということで、特別なことはありません。その後は専門委員会の審査によって了承を得られたら証書を発行するということになります。
これまでに平成19 年度が3 件、20 年度が17 件、計20 件の証書を発行しています。
「協働の森づくり」から発展する木質バイオマス利用によるカーボン・オフセット
●化石燃料の代替利用でカーボン・オフセット
高知県では平成19 年から、「排出量取引地域モデル事業」にも取り組んでいます。木質バイオマスをつかったCO2 削減事業ということになります。
事業の流れとしては、高知県が発電事業者に間伐材の利用を委託し、発電事業者が用材として使われなかった木の枝や根などの未利用残材を調達して、化石燃料の代替として使っていただいています。そのためにかかる費用の一部を委託という形で県が補填し、削減したCO2 量を高知県がいただくという形の契約を結んでいます。CO2 削減量を第三者機関に検証していただき、検証結果を受けてクレジットを発行し、これを企業にカーボン・オフセットのクレジットとして買っていただくこととしています。
この事業は、今年の6 月に国のVER のモデル事業として採択されています。これはVER という国が認めるオフセット・クレジットを発行して、それを環境先進企業に買っていただくというものです。高知県ではまだクレジットは発行できていませんが、今年度中には実際に企業との取り引きが行われることになっています。
●木質ペレットによるカーボン・オフセット
県の事業ではないのですが、「木質バイオマス地域循環モデル事業」も行われています。檮原町にある「ゆすはらペレット」という会社が間伐材や未利用残材を購入するための費用を檮原町が支援し、木質ペレットによるCO2 の削減量をクレジット化して環境先進企業等に買っていただくというものです。
この事業も、いままで使われていなかった資源を活用することで山にもお金が回る仕組みとして検討されたものです。木質ペレットを利用する機器が必要ですが、温泉等の施設でつかってもらうことで、地域資源も活性化されますし、そうしてお金が回ることで山の整備にもつながっていくという仕組みになっています。
県産材利用によるCO2 固定の推進
高知県では「CO2 木づかい固定認証」事業も、今年から始めています。これは県産材利用の推進と、地球温暖化対策としての木材利用によるCO2 固定という2つの観点を持って進めている仕組みで、単純にいうと木造住宅が固定しているであろうCO2 量を県が認証して、証書という形で建築主にお渡しするというものです。
証書としては「CO2 吸収認証」制度と同じような形ですが、これはクレジットとは関係がなく、県産材をつかってもらうことへの認証といった位置づけです。こういったものを通じて県産材利用を促進することで、木材の需要や利用先を増やし、そのことでCO2 の吸収量アップも見込めるのではないかということです。
(質疑応答)
Q かなり広い面積で認証されている場合もありますが、面積の確認等はどのようにしていますか?
A 何万ha といったところは特殊な例ですが、このエリアを対象にしつつ、年度ごとに整備した面積に応じて算出しています。ですから小規模の面積を点々と整備する事例が結構あります。そういった場所でも今のところ、調査箇所の設定数を変えてはいません。ただ今後は、調査箇所が膨大になる可能性もありますので、そういった場合は簡素化をして、調査箇所を減らすことも必要になるのではないかと考えています。


