森づくり活動チェック!環境貢献度etc

定性的手法

木俣 知大((社)国土緑化推進機構 政策企画部)



昨年度「企業等の森林づくり活動に対する評価手法の開発」で開発した、マネジメントツールとしての定性的評価手法(自己評価によるチェックシート方式)の概要・ポイント、活用方法に関する説明を行いました。


定性的評価の必要性

定性的評価手法開発の成果物はチェックリストの形をとっており、各都道府県の森林・林業関係者にとっては、その内容の詳細は概ね理解していただけるものだと思います。ここでは、定性的評価をどういう考え方で捉えればいいかを簡単に説明させていただきます。

最近では、企業の森林づくりや森林ボランティアの取り組みが広がっていますので、それがどんな効果があるのかというアウトプットの部分を評価していくことへのニーズはあるのですが、そもそもどういった取り組みをするのかといったところが上手くできていないと、その成果も期待するものが得られません。

例えば企業の森林づくりでは、「植林したいという要望だったため、二次林等を伐採して広葉樹を植えてはみたけれど、結局その広葉樹が活着しなくて思ったような森になっていかない」「企業の従業員の方が、植林には参加してくれるけれど、その後の下草刈りには参加してくれない」「協定期間の先に、どういう形で手入れをしていくべきかが、グレーゾーンのまま据え置かれている」といった声を聞くことがあります、企業は良かれと思って取り組みを始めているのですが、残念ながら地域社会からの評価が低下していくようなリスクが潜んだ状態で活動が行われていることがあるのです。

また受け入れ側の問題として、「人件費等の経費がかかって、この体制で続けていくのは難しい」といった声を聞くこともあります。森林組合や市町村の経験が乏しくて調整等の手間がかかってしまったり、さらには、地域の方がボランティアを強いられて疲れてしまっているというような場合もあります。このように、結果として持続的に展開しにくい活動になってしまっているという声が聞かれています。




そこで、企業の側も、つないでいく側も、せっかく良いことをしていこうという思いがあるのですから、みんなでwin-win の関係になれるような取り組みを進めてられるようになれればという問題意識がありました。

もうひとつ、企業にとっては、森林づくり活動を環境貢献として熱心に取り組んでいるという姿勢を社会に示していきたい、という側面も非常に強く持っているというのが実態だと思います。例えば高知県では、企業の活動をホームページで紹介したり協定を結んだりといった企業の社会的評価が高まるような仕掛けとセットで、CO2 吸収認定制度のような定量的な評価を押さえているのではないかと思います。

このように、成果を検証・改善する評価手法と、活動の社会的価値を向上する手法の2 つを組み合わせながら企業の森づくりの評価を考えるるのがよいのではないかと思います。


評価手法開発のための基本的な視点

報告書では、いままでどういう形で企業のCSR とか森づくり活動の定性的な部分の評価がなされてきたかを、いろんな制度をレビューしながら整理しています。そこでは3 つのポイントがありました。

ひとつは、いままでの制度でも格付けやランキングのようなものはあるのですが、そういう形ではトップランナーがメリットを得るだけで、その活動を幅広い対象にまで広げていくには不向きです。そもそも企業のCSR 活動やNPO の活動は自発的に行われているものですから、経団連や経済同友会をはじめとしたCSR の動きでも、PDCAサイクルに則って活動の改善をしていただけるきっかけになるようにマネジメントツールが創設される場合が多いようです。

2 つめは、評価要素として、企業活動でいえばトリプルボトムライン、つまり経済的側面だけではなく、環境的な側面、社会的な側面を含めながら総合的に評価されている場合が多くありました。

3 つめは、森林管理の持続性・社会性を担保する上で不可欠になるような要素を組み込むこと、マイナスになるような要素をできるだけ省いていけるような仕組みを盛り込んでいくことが重要だということです。



社会的評価を向上させる4つの仕組み

さらに活動の社会的評価を向上させていくための評価の仕組みは4 つのタイプに分けられます。

タイプ1 の「森づくり協定の締結」は、企業が行政と組みながら公益活動を行っているという姿勢を社会に発信していくことが、企業の評価を向上させていく機能になるだろうということです。

タイプ2「行政等による公表」は、その活動をプレスリリース、ホームページ、広報誌等によって行政のお墨付き的な意味合いで公表していくことで、企業にとっての社会的価値を高める仕組みです。

タイプ3 の「効果等測定」は定量的評価の部分であり、活動成果を可視化する側面があるかと思います。

タイプ4 の「第三者評価」は応用編といった側面になりますが、行政による認定や感謝状といったスキームによって、企業の取り組みが多角的に評価される仕組みです。



評価手法開発のための留意点

立場の違いによる価値構造の違い

価値構造の要素群は、森林側でも企業側でも同じように語られています。森林の価値構造としてFSC やSGECでは「環境」「社会」「経済」が要素群として示されていますし、企業の価値構造として経済同友会の企業評価の指針では「市場」「環境」「人間」「社会」という要素群が示されています。

ただし立場によって、同じ活動でも評価の仕方が違うことがあります。例えば温暖化防止の取り組みは森林分野にとっては「環境」という取り組みで捉えられていますが、企業が取り組むときには面積が少なく効果も少ないため、「環境貢献」ではなく「社会貢献」として捉えられている場合が多いようです。また環境教育は森林分野にとって社会的活動と捉えられていますが、企業が従業員に環境教育を行うことは社会的活動というよりは環境的活動として捉えられています。同じ事業でも、立場が変わることで価値が変わるということを留意しながら、評価手法を考えなければならないのではないかということです。

立場の違いを活かして価値を複合化する

また、ひとつの指標だけで価値を高めるのではなく、森が持っている価値は立場によっていろんな広がりがあることを踏まえて社会的な価値が高まるような取り組みを進めていかなければなりません。例えば人づくりという観点だと、企業にとっては従業員が森林の公益的機能や森林管理の重要性を理解していただくという活動をすると、それは従業員にとっての環境教育という側面になります。一方で地域にとっては、都市の人と山村地域の人が交流活動を行うことによって、地元の魅力を再発見することができたり地域活性化につなげられるという側面があります。また企業が広報活動で「企業の森づくり」をPR することは、その地域にとってもPR にもなりますし、一般の人たちにも「行政や所有者任せで森林を整備するのではなく、自分も森づくりに参加することが重要なのではないか」というところの普及啓発にもなるという側面もあります。そういう部分も上手く組み合わせていくとよいのではないか考えています。





定性的評価手法は森づくり活動を発展させるためのヒント集

そういう観点を踏まえて、定性的評価手法としてのチェックシートを開発しました。このチェックシートづくりにおいての留意点は3 点あります。

ひとつは、コミッションの活動を進めていくときにも重要な要素として位置づけられていますが、「持続可能で計画性のある森づくり」であること、従業員の方が参加したりすることもあるので「安全な森づくり活動」であること、また活動地域に都市の方が行くからには「地域社会への配慮」という側面に配慮することが重要です。なので、そういうところに目を配りながら取り組んでいけるようなものにしました。

2 つめは、より良い価値や機能を発揮できる「仕組み」があるかを問うていくような形にしました。「こうでないとダメ」ということではなく、そういう取り組みをしていく姿勢があるかという観点で表現をしていくような形にしています。

3 つめは、先ほどお話しした、森林分野と企業分野の価値構造の違いを融合する仕掛けになるように努めた、ということです。

参考にした既存の評価手法としては、森林認証系の指標、モントリオールプロセスの基準と指標、『社会・環境貢献緑地評価システム(都市緑化基金)』『市民参加の森づくり活動における「森林施業ガイドライン」(森づくりフォーラム)』『里地里山保全再生計画作成の手引き(環境省)』などがあります。

基本的な評価の枠組みとしては、環境、社会、地域といった側面と、目的別項目でつくっています。

利用イメージ

このチェックシートは、都道府県やコミッションという仲介的立場の方たちが自分自身で使うことを想定するのではなくて、地域で企業の森づくりを受け入れているNPO や組合の方、そういう活動をコーディネートしている方などが使っていただければよいのではないかと考えています。

利用方法としては、こういうチェック項目を見ながら、森林組合なり地域の人たちが「自分たちが目指している方向に合わせてどういうことを配慮すると、将来的にも良い取り組みになっていくか」について確認するために使っていただければいいのではないかと思っています。チェック項目としていろいろ設けていますが、全部をチェックすることを目指しているものではありません。また、「はい」が多いから活動として価値が高いということもありません。第三者の評価のためではなく、あくまで自己評価のためのものであり、それぞれの活動をふりかえり、次にどういう形にしていくと発展するかを考えていくためのヒント集といった意味合いとして使っていただければいいのではないかと考えています。

利用の手順としては、その地域の団体が目指している目的やスタンスを踏まえて、少しずつ必要なものをチェックしてもらえればいいのかなと思います。より社会性の高い森づくりを進めたいならば「環境」の要素を、より多くの方々の参加を得て体制を拡充したいならば「社会」の要素を、地域の主体性を育んで自律的な取り組みにつなげていきたいならば「地域」の要素を参照していただくとよいと思います。

項目としては多いのですが、内容的には基礎的なところにとどめた要素になっています。例えば環境的な要素のなかに水土保全がありますが、そこには「水資源の保全に配慮した森づくりを行っていますか」とか、作業道をつくられる場合は「土砂流出とか斜面崩壊にならないようなことを配慮して活動していますか」といった項目を設けさせていただいています。こういうもので、いままで漠然と取り組んでいた道づくりを、土砂流出を考えながら取り組んでいただければと思っております。

このような観点から、地域のNPO なり企業の森づくりを受け入れる団体に使っていただくことによって、自信をもって紹介できる団体が各地に増えていき、結果として企業の森づくりも地域の森づくりも活性化するような流れができればいいのかなと思っております。

今後とも、皆さんからも忌憚ないご意見をいただきながらバージョンアップしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。


「森づくり活動チェックシート」の一部

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