森づくり活動チェック!環境貢献度etc

森林吸収源等に関連する評価手法に関する近年の動向

小林 紀之(日本大学大学院 法務研究科 教授)



都道府県による評価手法に関する取り組み状況の概観、環境省による森林吸収やバイオマス活用によるオフセット・クレジットの認証制度等に関する最新動向をご紹介いただきました。


 小林 紀之(こばやし のりゆき)

  日本大学大学院 法務研究科 教授。
   1940 年東京都生まれ。住友林業(株)理事・研究主幹、北海道大学非常勤講師、愛媛大学客員教
   授、(財)地球環境戦略研究機関(客員上席研究員)等を経て現職。農林水産技術会議専門委員、
   環境省京都メカニズム検討委員会委員等歴任、現在は環境省カーボン・オフセットに用いられる
   VER の認証基準に関する検討会委員長、高知県協働の森づくりCO2 吸収専門委員会委員長、
   長野県の森林CO2 吸収評価認証委員会委員長、森林バイオマス吸収量活動推進協議会検討会
   (下川町、美幌町、滝上町、足寄町)委員長、やまなしの森づくり・CO2 吸収認証制度検討委員会
   委員長等をつとめる。環境法政策学会、環境経済・政策学会会員。博士(農学)。
   <著書>『温暖化と森林 地球益を守る』( 日本林業調査会) ほか


    環境省により検討が進められている「オフセット・クレジット(J-VER)」の森林吸収クレジットに関する発表内容(質疑を含む)は、
    本研修開催時点で公示されていた情報に基づく内容です。その後の検討を経た公式的な内容については、下記サイトに公表
    されています。環境省「カーボン・オフセットに用いられるVER(Verifi edEmission Reduction)の認証基準に関する検討会の開
    催状況・結果について」http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/conf_ver.html



地方自治体と企業・団体の協働による森林づくり

まずは地方自治体と企業・団体の協働による森林づくりについてお話しいたします。


小林 紀之さん


高知県では「協働の森づくり」を行っており、仕組みとしては企業と県、市町村(森林組合)がパートナーズ協定を結んでいます。さらに高知県には吸収量認定制度がありまして、協働の森制度を対象に、そこで施業をしたことによって増えた吸収量を県が承認しています。これには専門委員会があり、私は委員長を務めさせていただいております。

和歌山県の「企業の森」は、森林所有者と企業が、土地無償貸借契約を直接行います。そして森林所有者はフィールドを提供し、県は企業と市町村との協定の仲立ちをして参加するという仕組みになっています。さらに企業と森林組合は植栽・森林保全委託契約を行います。このように和歌山県は、高知県と比べて少し契約が複雑になっています。

大阪府の「アドプトフォレスト」制度では、事業者等と森林所有者が直接活動場所を決定し、大阪府がそれを仲立ちする仕組みになっており、事業者等と森林所有者、大阪府、地元市町村の4 者協定を締結することになっています。荒廃森林を5 年間かけて広葉樹化していくことが中心になっており、直接事業者が広葉樹化のお手伝いをしています。

企業のメリット

高知県「協働の森」では、社会貢献活動、CO2 の吸収証書、新しいビジネスチャンス、地元住民との交流といったことがあります。特に新しいビジネスチャンスや地元住民との交流には、非常に大きな成果を上げているのではないかと思います。

和歌山県の「企業の森」については、やはり社会貢献、CO2、環境教育、福利厚生のフィールドになっているということがあり、多くの企業が実際に参加するということがあります。和歌山県のホームページには、「企業の森」による経済効果も紹介されています。

大阪府「アドプトフォレスト」の一番大きな特色は、大阪府の温暖化防止条例との関連があることです。大阪府では、相当以上CO2 排出する企業に対して、排出量の上限を定めています。そういった企業がアドプトフォレスト制度に参加した場合、そこで吸収したCO2 を企業の排出削減の中に不完全ではありますが算入できるのです。

表には出ておりませんが、京都府モデルフォレスト運動でも同様なことが行われています。京都府地球温暖化対策条例の17 条には「事業者排出量削減計画書における削減目標を達成するための補完的手段について」という規定があり、そのなかで「事業者の多様な地球温暖化対策を積極的に評価し、これらを促進するため、次の対策を計画書の温室効果ガス排出量の削減目標を達成するための補完的手段とし、事業活動に係る温室効果ガスの削減量に加算することを規定」するとあります。つまり排出削減目標の中に、森林吸収量を加算することができるのです。その補完的手段として、A:森林の保全及び整備(知事が別に定める森林吸収に係る認証制度に基づく認証を受けたものに限る 例…モデルフォレスト)、 B:府内産の木材の利用(府内産の木材認証制度に基づくものに限る。例…ウッドマイレージCO2)とされています。



市町村、森林所有者のメリット

市町村、森林所有者のメリットとしては、協賛金等という形で森林整備経費の確保ができる。それから森林整備の市民参加による推進、雇用の創出、都市住民との交流、その他といったものがあるのではなかろうかと思います。


地方自治体の森林吸収源活用の取り組み

次に、具体的に森林吸収源をどう評価しようとされているか、ということです。

皆さんのお手元にある、全林協がお調べになった『企業等による森林づくり活動に対する都道府県の支援等調査結果』に、一番新しい、詳しい情報が出ています。検討中を併せると60%の都道府県が何らかの形でCO2 の吸収量の認証に取り組んでいるということです。さらにはその吸収量の使途として、将来行うというところまで含めると、CSR で活用しているのが58%、カーボン・オフセットは24%と出ています。

都道府県だけではなく、市町村での事例もあります。北海道では下川町、足寄町、美幌町、滝川町の4 町が協働で行っています。この取り組みも過去3 年くらい検討をしており、私自身もお手伝いをしておりまして、いままで何度となく行っています。下川町は環境モデル都市にも選ばれておりまして、森林バイオマスを中心とした活動を本格的に進めていますし、その他の町も特徴を出しています。まったく違う特徴を持つ4 つの町が組んでいるというのは非常に面白いと思います。

また、静岡市も環境モデル都市として、低炭素型社会への転換を図っており、注目されています。静岡市は77%を森林が占めていますが、海岸の方ではたくさんの工場がCO2 を排出しており、「CO2 の地産地消」モデルの構築として、森林吸収源の活用等の取り組みが行われています。

具体的な活用事例として、高知県では「CO2 吸収認証制度」「CO2 削減認証制度」「CO2 木づかい固定量認証制度」という3つの制度がそれぞれ進んでいます。他にも、長野県では「森林CO2 吸収・評価・認定制度」が、山梨県では「やまなしの森づくりCO2 吸収認証制度」、下川町等では「森林バイオマス吸収量活用制度」、静岡市では「都市と森林のリンケージによる二酸化炭素の地産地消」などが行われています。

吸収量の計算方法は、我が国では吸収量(炭素t/ 年)を、蓄積量(m3/ 年)×拡大係数×容積密度(t/ m3)×炭素含有率で産出しています。私が知る限り、制度設計をしている自治体も、この計算方式で行っています。


環境省オフセットクレジット(J-VER)制度の論点

カーボン・オフセットとは、私たちの日常生活で努力しても削減できない排出量を、他の場所や他の活動による排出量の削減や吸収量の増加によって埋め合わせする手法のことです。環境省では「カーボン・オフセットとは、市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が自らの温室効果ガスの排出量を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること又は他の場所で排出削減・吸収を実現するプロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせることをいう」と定義しています。また、カーボン・オフセットによって生まれるクレジットのことをVER(VERIFIEDEMISSON REDUCTION)といっています。

我が国の取り組みにとしては、環境省が「カーボン・オフセット指針」を今年の2 月に出しており、非常に力を入れています。そこでは、カーボン・オフセットのそもそも論からはじまり、世界の動き、我が国でカーボン・オフセットをどう進めていくか、どういうプロジェクトが対象となるかといった様々な基本的なことが記されています。

この指針に基づいて「カーボン・オフセットに用いられるVER の認証基準に関する検討会」が3 月に設置されています。そのなかで、認証基準に政府行政がどこまで関わるかが問題になりました。カーボン・オフセットは、あくまで自主的に取り組むものですから「民間に任せればいい」という意見もありますが、一方、こういった制度が普及していくと、何らかの方法で悪用されたりといった様々な問題が起こる可能性があります。この制度を普及して信頼性・透明性のあるものにしていくためには、ある程度、綿密な制度設計が必要ではないかということから、11 月に「環境省オフセット・クレジット(J-VER)制度実施規則」が出されており、次のような点が論点となっています。

J-VER の信憑性確保

カーボン・オフセットの取り組みには「市場流通型」と「特定者間完結」があります。特定者間完結であれば、排出している業者と、その排出枠を活用したい業者の両者が、ある程度納得していれば良いわけです。しかし市場流通型になりますと、不特定多数の方がそこから生まれるVER を購入することになり、そうなると信頼性が必要になります。第三者認証が必要なのです。認証機関の条件も厳しく決まっており、ISO14065 で認定された機関とされています。森林関係に詳しい事業体が「私が認証をします」と言ってもダメなのです。そうしますと、現在CDM(クリーン開発メカニズム)の審査をするような国際的な機関がまずは候補になるでしょう。

ポジティブリスト

このオフセット・クレジットの制度で対象になるプロジェクトのことをポジティブリストといいます。まずエネルギー分野で「化石燃料から未利用林地残材へのボイラー燃料代替」ということが考えられています。高知県で行われているカーボン・オフセットがこれに当たります。また、森林整備等によるCO2 吸収も対象になると考えられており、これについては現在ワーキンググループをつくって具体的な制度設計をしており、私が座長を務めております。

プログラム認証

また、プログラム認証ということで、各自治体が取り組んでいる制度が環境省のカーボン・オフセット制度から見ても妥当であるということであれば、それをプログラムとして認めていこうということが検討されています。私も、これまで自治体が取り組まれていることが損にならないような、それが活かせる制度にすべきだと主張しています。


諸外国の状況

一方諸外国を見てみますと、すでにオーストラリア、ニュージーランド等では、州もしくは国の制度として動いています。またアメリカのシカゴ気候取引(CCX)森林吸収源のプロジェクトも取引対象になっており、CCX の全体取引量の数%が森林吸収源のクレジットになっています。


森林吸収源の経済・社会的価値化

これまで森林の環境機能は、様々な面で利用されてきましたが、そういった環境価値が森林所有者に具体的に経済的に還元されるということはありません。しかし、森林が吸収したCO2 を上手に活用すると、その可能性が生まれてくるのではないかと思います。

残念ながら、京都議定書・国内排出量取引制度での森林吸収源活用は対象外になりましたが、将来はぜひ検討していただきたいと思います。その他の制度での森林吸収源活用として、カーボン・オフセットによる活用はぜひ進めていただきたいと考えております。また炭素権という、森林が吸収したCO2 は誰のものかという考え方がありまして、オーストラリアでは植林作業によって生まれるクレジットは当然植林事業者に属するということになっています。このことについて、ぜひ皆さんも考えていただきたいと思います。

また、これらをどうやって市場メカニズムにのせていくかが大切ですし、実際に市場で動かしていく上では、クレジットが必要になります。京都議定書のクレジットや国内排出量取引制度のクレジットは、我が国では対象になっていません。一方カーボン・オフセットは、具体的に市場メカニズムとして活用できるようになっており、クレジットとしてJ-VER、またクレジットではありませんがCO2 認証証書があります。

新しい森林の価値として、排出量取引による収入、自主的取引による収入、企業の削減目標への繰り入れやCSR が、今後さらに広がっていくことを期待しています。





【参考】
 ・『企業等による森林づくり活動に対する都道府県の支援等調査結果』(全林協)
   http://www.ringyou.or.jp/hukyu/detail_753.html
 ・『我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)』(環境省)
   http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/guideline/guideline080207.pdf
 ・『オフセット・クレジット(J-VER)制度実施規則(案)』(環境省)
   http://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset/conf_ver/06/mat03_1.pdf




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