森づくり活動チェック!環境貢献度etc

計画性・安全性・地域性を配慮した持続可能な企業・市民参加の森づくり
 〜「森づくりコミッション」の構築に向けて〜

宮林 茂幸(東京農業大学地域環境科学部森林総合科学科教授・森づくりコミッション全国協議会 運営委員長)



近年、地球温暖化問題の深刻化などにより、森林に対する社会の期待は高まっています。社会全体で森林を支えていくためには、企業・学校・NPOなどの幅広く多様な主体の参画を得られることが必要です。また、そのような主体の参加を円滑かつ効果的に地域の「森づくり」や「地域づくり」に受け入れる、受入側の体制づくりも不可欠です。その上で、参加主体の強みを活かした新たな運動を展開させていくことが望まれます。
そのためには、受入側、参加側が有する多面的な価値をそれぞれ引きだし、効果的にマッチングするための中間支援的な役割を担う組織や体制が求められています。なぜ今、中間支援機能を担う「森づくりコミッション」が必要なのか、具体的な事例を交えてお話します。


 宮林茂幸(みやばやし しげゆき)

  東京農業大学地域環境科学部・教授(農学博士)。多摩川源流自然再生協議会・会長
   世田谷区と群馬県川場村の交流事業や、山梨県小菅村の多摩川源流自然再生協議会に係る各種
   事業などで、全国各地での上下流一帯となり、かつ企業、行政、大学、NPO等が連携した森づくりの
   現場で、実践的なコーディネートを担う。また、林野庁「企業の森林整備活動に関する検討会」の座
   長を務めるとともに、「森づくりコミッション全国協議会」運営委員長を務めるなど、企業の森づくり等
   の国民参加の森林づくりの推進に係る国の森林政策の動向に深く関与している。

   【専門分野】
    林業経済学、森林政策学、森林環境政策学、森林レクリエーション学

   【主な研究テーマ】
    地域振興と森林レクリエーション、山村と都市の交流、地域開発とむらおこし、市民参加による森
    林管理、森林体験と環境教育、流域連携と流域共生圏など

   【社会活動】
    林業経済学会理事・評議員、林業経済研究所常任理事、日本緑化センター理事、大日本山林
    会理事、せたがやトラストまちづくり協会理事、東京都森林審議会委員、群馬県上下流連携支
    援センター理事長、多摩川源流大学運営委員長、多摩川源流研究所運営委員長、その他

   【主な著書】
    「森林レクリエーションとむらおこし・やまづくり」(全国林業改良普及協会)、「森林教育のすすめ方」
    (全国林業改良普及協会)、「森林・林業教育-実践ガイド-」共著(全国林業改良普及協会)、「みど
    りの環境デザイン」(東京農業大学出版会)、「林業経済研究50年の動向」(日本林業調査会)、その他


「共通財産としての森林」という概念

21世紀の社会は「安全な社会(安全)」「安全を持続する地域づくり(持続)」「全員が参加する地域づくり(連携)」がキーワードになっており、それらを繋げるのが「責任」という言葉だと思います。その責任をつくり上げていくためには、特に社会の連携、社会参加という構造が必要です。私は「参加型社会」と言っていますが、責任ある参加型の社会の形成こそが21世紀のあるべき姿だろうと思っています。

私たちが次世代に残すべきなのは、物質循環が回っている社会であり、そのなかに経済循環も含まれます。資本を、生産力のためといった目的投資ではなく、環境への責任投資をしていく社会、つまり、ものを生産する時には必ず環境を意識するのが21世紀ではないかと考えています。

そのための一番の基盤となるのは森林です。私たちの先祖は、森林からいろんなものを求めて生活を築いてきました。それは結局、いまでも同じです。ところが森林はいま、大変厳しい状況です。ひとつには、「緑の砂漠」と私は言っていますが、森林が乾いているということがあります。生態的に見ると、例えば丹沢ではクモやダニ、コケの類がドンドン減少していますが、それは森林が乾燥しているからです。このような森林をどうしていくのかが、私たちの課題になっていくだろうと思います。

ある人に聞くと、イギリスの林業の利回りは20%なのだそうです。造林利回りが回っていないのは日本くらいで、大多数の国はキチンと回っているのです。造林利回りが回っている国はおそらく、生活に大事な森林を守っていく国土保全という考え方が、しっかりと政策の中に入っているのだろうと思います。

私たちはこれまで、治山事業をしてハゲ山を森林にしてきました。しかしその森林はいま、手入れがなされずに荒れた状態になっています。このまま放置しておくと、または木材価格が高くなったからといって再びドンドン伐ってしまうと、せっかく森林にしたものが元の木阿弥になってしまいます。ですから、21世紀には森林をどう位置づけ、どう守るのかという基本的な概念が必要になります。私は、それは「共通財産としての森林」ということではないかと思います。自分たちの生活に必要な森林を共通財産として守ると同時に、次の世代に何を残すのかという責任が問題なのです。


企業参加の機運の高まり

現在は多くの国民のみなさんが下流から上流に入り、森づくりボランティア活動を行っていますが、その中身はかなりバラバラです。また、現在は1900近い森づくり団体がありますが、それらが持続していくこと、あるいは森林に責任を持って活動を行うことが、資金繰りの問題等によって難しくなっています。そんな中で活発になりつつあるのが、企業の参加です。

戦後まもなくは、国民も企業もお金も力もありませんでしたから、国が力を入れて全国的に緑化を展開してきました。今は逆に行政は大赤字ですが、国民のみなさんはボランティア精神が出てきているし、企業はCSRとか環境問題の中でお金を山に落とそうという関係が出てきました。ですからこれからは、企業やボランティアが中心となった市民参加の中で森づくりは展開していく方向にあるのではないかと思います。


宮林 茂幸さん


経団連の調査によると、CSRを意識して活動をしている企業は75%あり、すでに取り組みを開始している企業は5割を超えているそうです。しかし残念ながら森づくりは、企業が取り組みにくい活動です。その理由に、①なぜ森づくりに参加するのかの意味が分かりにくい、②コミッション的な役割を果たすものがほとんど皆無、③募金や基金がどう使われているのかが分かりにくい、ということがあります。逆に言えばこれが、森づくりコミッションが必要な理由であり、これらのことをキチンと企業に説明することが「森づくりコミッション」の役割でもあると思います。


企業参加の促進に向けて

企業による森林整備のありかたとしては、ひとつにはユニーク性や話題性、多様性をPRできる自主的な活動である必要があります。私たちがその点をもって企業に営業に入っていくと、企業はある程度理解してくれます。また、「私たちは環境教育や地域づくりといった観点の専門的なサポートを行えます」といった役割の明確化が必要です。企業に対して「間伐材の伐出を手伝ってくれませんか」というように役割を明確にしたり、「結果的に社会性、持続性はこうなります」というようにビジョンを共有化してあげると、「それならばやってみよう」ということになるのです。

企業の参加意欲を喚起するには、まずは「環境」「健康」「教育」「地域づくり」といった具体的なテーマが必要です。そして、私のようなメタボリックに対しては「森に入ってカマを振り回せば、腹の出っ張りが引っ込むよ」というような感じで(笑)、企業のメリットはなんなのかを示してあげる必要があります。そして話題性を内包した、企業が参加したくなるようなテーマを考える必要もあります。活動内容の評価と公開を明快にしていく必要もあります。森づくりコミッションにはアドバイザーがつきますから、そういうところと相談しながら、企業の窓口を訪ねて一緒に議論してもいいと思います。そういう中から、徐々に企業を巻き込んでいくことが必要です。

もうひとつ、企業にとってはステークホルダーへの説明が重要になります。そのためには、評価手法の確立と充実が必要です。いま、林野庁でも別のところで、CO2固定と水源涵養と土砂流出防備に対する効果、また持続性や計画性を見ながら点数化していくという評価手法を考えてもらっています。そういう評価体制をできるだけ簡単なものにして、その評価をキチンと公開していけるようにすれば、企業としては森づくりにやる気になるはずです。

これから企業がどういう形で森づくりに参加してくるかというと、①人的資源の活用(従業員、退職者、家族、顧客)、②販売・商品の活用(グリーン購入、募金活動)、③福利厚生の充実(健康維持、メンタルヘルス等)、④社会貢献(森づくり、地域づくり、人づくり、環境づくり)があると思います。基本的には、地域にとっても企業にとっても具体的なメリットが必要であり、そのことが持続的な森林管理としてつながっていくことになります。ですから、地域の森林計画とも整合性があった方が良いと思います。


企業・市民参加を進める「森づくりコミッション」の留意点

「森づくりコミッション」には多様な形があってもいいでしょう。ただし必要なのは、全国がひとつにまとまっていくための森づくりコミッション同士の連携です。そうなっていけば、キャッチフレーズは「美しい森林づくり」で、実際に活動しているのは「森づくりコミッション」、その背景には企業がいるといった形で、最終的に一体化していけるのではないかと思います。

企業・市民参加の森づくりを進めていくには、いくつかの課題があります。それは「地域性」「安全性」「計画性」です。

地域性

森は、その地域の特性に合った森になっているはずですし、逆に言えば森の特性に合わせてその地域ができているはずです。地域によっては技術特性もあります。それらを無視してはいけないということです。したがって、地域の専門家とコンセンサスが取れるような「森づくりコミッション」が必要です。

安全性

ボランティア活動でも、だいぶ大きな事故が出てきています。その原因には、現場が奥地化していることと、木そのものが大きくなっていること、そしてチェンソー等の機械を使う活動が多くなっていることが挙げられます。一度事故が起きてしまうと、そこの仕事は終わってしまいます。ですから安全管理はきちんとやらなければいけません。いま、森づくりフォーラムが中心になって技術習得制度をシステム化しようとしています。こういったものを活用して安全性を担保するような方向性が、「森づくりコミッション」にとって必要でしょう。

計画性

地域の森林のあるべき姿を、森林計画と整合性を持たせながら考える必要があります。そして持続性ですね。企業はだいたい3年で活動を終えてしまうので、これをできるだけ持続していく必要があるのですが、地域づくりというビジョンがあれば企業の参画のしかたも変わってくるはずです。

そのような長期的な計画性と同時に、実践における計画性も大事です。例えば、雨が降ったらどうするかとかを想像してプログラムをつくる能力が必要です。特にボランティアが入る場合は、ボランティアの能力に応じた活動のしかたを考えなければなりません。


「森づくりコミッション」への期待 -市民参加型社会の実現に向けて

市民参加型社会をつくり上げてためには、「何かをやってあげる」ということではなく「何ができるのか」が必要で、それが結果的には自分に返ってくるものでなければなりません。そのためにも「森は社会的共通資本、みんなの財産だから、みんなで守っていこう」という意識が必要だと思います。そして参加型社会が目指すものは、自らの意思で社会づくりに関わることだろうと思います。そこには多様な人が入ってきますので、合意形成をキチンと持つことも大事になります。

また、企業と地域が交流するときには、可能な限りビジネスチャンスを考えてもらいたいと思います。これからはたくさんの木材を使ってもらう必要があるのですが、そこには企業のノウハウがあるはずです。そして協働していく条件としての安全性、持続性、計画性といったものをキチンと持ったものにしていく必要があります。

私たち人間は、自然循環の中に組み込まれているのですが、いまはこの循環が切れてしまっているところがたくさんあります。その循環を再生していくというのが、これからの社会づくりの基本的な考え方です。これからの森づくりの大きなテーマもそこにありますし、国民みんなで森づくりに対応していかなければならない時代に来ているのだろうと思います。そのなかで「森づくりコミッション」が大きく発展していってもらいたいと願っています。




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