高知県「協働の森づくり」(県・市町村連携型)
高知県「協働の森づくり」(県・市町村連携型)
|
|
目的は森林整備と地域交流による活性化
高知県は森林率が全国一で84%、そのうち65%が人工林であり、県土の森林面積が多いことと、その大部分がスギ・ヒノキの人工林であることが特徴です。そのなかで、林業従事者の減少や木材価格の低下等から、山の整備ができていないという現状があります。
高知県では平成15年に全国に先駆けて森林環境税を導入し、その税収で森林整備や啓発活動を行っていますが、それでもなかなか森林問題の解決にはつながらないということがありました。また、ちょうど京都議定書が発効間際であったこともあり、「排出権取引の考え方を大手企業に働きかけ、モデル的な取り組みを進める」という知事公約に基づいて、平成17年の4月に「排出権取引推進監」「専門企画員(排出権取引担当)」の2名を配属させてプロジェクトチームをスタートさせました。しかし発効した京都議定書では排出量取引は見送られてしまったため、CSRとして企業に森林整備に協力していただく方向に変更し、平成17年から「環境先進企業との協働の森づくり事業」をスタートしています。
この事業目的には、手入れがされていない人工林を間伐等によって整備して、森林が本来持っているCO2の吸収機能や水源涵養機能を回復させること(森林整備)と、高齢化・過疎化が進んでいる地元と企業とが交流を進めることで、それによって活性化を図ること(交流)があります。
企業、市町村、高知県の3者によるパートナーズ協定
事業のしくみは、基本的には企業、市町村、高知県の三者によるパートナーズ協定を締結することで全体の枠組みを決めています。協定書には、協定の期間、協定森林の場所と面積、森の名前や企業からいただく協賛金の金額、それぞれの主体が行うことが記されています。 各主体の役割分担としては、県は、企業に対する具体的な事業の提案活動や候補地探し、事業全体の調整、窓口を行います。市町村は、企業からいただいた協賛金を活用して間伐を中心とした森林整備、地元の窓口機能、地元と企業との交流のサポート行います。実際の森林整備は市町村から森林組合等に委託しています。
高知県の山は間伐未実施の山が多く、下草も生えない暗い森が多くあります。こういう森を「間伐することによって、下層植生が豊かで木も元気になる森を目指したい、最終的には混交林のような形に戻していきたい」ということで企業の方にお話をさせていただいています。 協定を結んだ企業には年に1〜4回、実際に森に来ていただいて、地元の方と一緒に木の間伐をしていただいています。そのため協定森林には、あまり急峻ではなく木も大きすぎない「交流ゾーン」が設けられる森林を選定するようにしています。手ノコで間伐をすることがほとんどですが、一部ではチェンソーを使っての間伐を体験してもらうこともあります。その場合は指導者を付け、安全管理に十分な注意を払っています。
また、間伐をしてもらうだけでなく、地元の人に触れあってもらうことも重要だと思います。例えば地元の女性グループにご協力いただいて、地元の食材を使った食事を楽しんでいただいていますが、特に都会の企業の方に新鮮に感じていただいているようです。地元を好きになっていただくという事からも、食事ということは重要なポイントになるのではないかと思います。地元の小中学生と一緒に体験活動をしてもらうのも有効ですし、CSRとしても意味があるのではないかと思います。

“企業にとってのメリット”と“その地域で行う必然性”の提案がポイント
このような事業では、企業にとってどういったメリットを提案できるのかがポイントになります。 ひとつは、間伐した木を有効に使うということから、協定森林の木材を使った名刺の台紙を渡しています。この名刺をきっかけに「私たちはこういう活動に協力しています」ということが自然に話せるということで、非常に評価が高いです。
県や市町村の広報誌で企業の活動を紹介し、県のホームページのトップの一番上にも、協定をいただいている企業につき1カ月間バナーの掲載をしています。これは企業にとってはPR効果となります。また、協賛金の使われ方や企業の交流活動の内容等をレポートし、A2サイズにまとめて企業に配布しています。これは企業の会議室などに貼っていただいたりすることで、企業の社内外向けにアピールできるツールとなっています。
協定森林の木材を使った名刺台紙 |
県ホームページのバナー広告 |
CO2の吸収証書 |
協働の森成果報告書
また今年度から、実際に間伐等をした森林を現地調査した上で吸収量を計算し、CO2の吸収証書という形にして企業にお渡しする取り組みをしています。実際にCSRの成果が客観的な数値になるということで、企業には非常に喜んでもらっています。
ただ、それで本当に企業として十分なのか、ということでは若干疑問が残るところです。実は、この事業を始めてから半年くらいは、協定がひとつも結べませんでした。当初は間伐ということをメインに事業を組み立てていたのですが、企業に間伐の意義を理解してもらうのが難しかったということがあります。また、企業が高知県に協力する理由はなんなのか、ということが企業内での理由付けが難しいという声がありました。間伐の意義については繰り返し説明することで、また、なぜ高知県なのかということについては「森林先進県である高知県でモデル的にやってみませんか」という提案をすることで、ご協力いただけるようになってきてはいますが、やはり「なぜそこで取り組むか」の理由をつくってあげることが重要ではないかと思います。
企業のメリット向上のための検討が必要
平成18年5月に第1号の協定ができてからは順調に協定企業が増え、現在は22の企業・団体と協定を結んでいます。それぞれの協定森林の名前は企業にオリジナルで付けていただき、協定期間は基本的に3年以上でお願いしています。交通アクセスは企業が協定を結ぶにあたっての大きなポイントになっており、高速道路のインターチェンジから近いところで多くの協定が結ばれています。
こうして協定も増えてきて、とりあえず当初の目的は達成されつつあるのですが、一方で課題があります。
これだけの大企業のみなさんに協定を結んでいただいて森林整備をしているのですが、企業と地域との繋がりを今後さらに深めていく必要があると考えています。そのためには、企業のメリット向上のための方策の検討が必要でしょう。また、パートナー企業同士、市町村間の連携といった横の連携を強めていくことで、さらに繋がりを深めていければと考えています。
今後の展開として、森づくり以外のテーマでのCSR活動のメニューづくりができないかと考えています。またCO2吸収自体の付加価値向上ということで、CO2の森林吸収やバイオマス利用による削減を数値化し、企業等による支援のシステム化を図ることを考えており、より排出量取引に近いモデル事業を行っていく予定です。


