森づくりインタビュー - 須藤 元気さん

「森づくり」について各界の著名な方に語っていただきました。

「変幻自在のトリックスター」の異名を持つ人気格闘家であり、格闘家引退後は作家・タレント・としてご活躍中の須藤元気さん。現在、北海道に地元産材を使ったログハウスを建設中で、将来は森に囲まれて暮らせるように、敷地内に様々な樹種を植林しているそうだ。今回は「木づかい生活応援団」として活動されている須藤さんに、森や自然に対する想いをうかがいました。

「ポジティブアプローチが世界を変える
まずは自分が木や森と触れあうことで幸せになることを大切に」

須藤 元気さん

作家・タレント・元格闘家・木づかい生活応援団

1978年、東京都生まれ。拓殖短期大学卒業。2009年拓殖大学大学院入学。総合格闘技を主戦場に格闘家として活躍し、相手を攪乱するファイトスタイルで人気を集めた。2006年に格闘家を引退し、作家、タレントとして精力的に活動中。拓殖大学レスリング部監督にも就任している。著書は『幸福論』『風の谷のあの人と結婚する方法』『キャッチャー・イン・ザ・オクタゴン』等多数。5月には新作を発表予定。

森や木に触れると自然のサイクルを直感的に感じられる

僕は東京生まれの東京育ちですが、子供の頃から森や自然に対する憧れを持っていました。よく自転車とかヒッチハイクでひとり旅をしていて、最初に行ったのは奥多摩だったでしょうか。森の中でボーっと瞑想まがいのようなことをやってみたりして、自然のノイズのなさといいますか、有機的なものっていいなって感じたことを覚えています。でも格闘家を目指しはじめてからは、自分がいかに強くなって有名になってお金を稼ぐかという、物質至上主義のような感覚がほとんどを占めてしまい、一時、森や自然と接することを忘れてしまっていました。

4年前、ふと思い立って四国の遍路道を巡りました。遍路道の山の中をひとりで歩いていたとき、最初は誰もいなくて薄暗い森の中が少し怖かったのですが、お遍路を続けるうちにだんだん慣れてきて、逆に森の中にいるのが心地よくなっていきました。最初に森の中を怖く感じたのは、それだけ自分と自然との距離が離れていた、ということだったのでしょう。この経験をすることで僕は変わったように思います。今は、常に自然体、等身大でいることの大切さを、すごく感じています。

格闘技では、試合をやっているうちに、攻める時と守る時のサイクルが分かってきます。間合いのようなものですね。人生においても同じようなものが存在すると思います。それは頭で考えるのではなく、直感レベルで感じるものなのですが、森に入ったり木を使うことによって、その感覚が研ぎ澄まされ、自然のサイクルというか秩序のようなものを、より感じやすくなるような気がします。

周りを変えるには、まず自分を変えることが必要

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僕自身は木という素材が好きですし、木を使うことは素晴らしいと思っています。ホームタウンのエリアには木場や新木場があり、材木と接する機会が多かったことが、もしかしたら無意識のレベルにあるのかもしれません。でも、「だから木を使おうよ」と言ってみたところで、それは決して伝わることはないでしょう。結局、周りを変えようとしても変わりませんし、「変えてやろう」というアプローチは、ネガティブなパワーになってしまいます。量子論的な考え方でいえば、この世界は自分の意識の投影物なのですから、周りを変えるためには自分を変えなければならないと思っています。

僕が格闘技のプロをやっていた頃は、もっと熱い人間だったんですよ。友だちの前でも、「夢を持とうよ」「もっと頑張ろうよ」「やりたいんじゃなくて、やらなきゃ」なんてことを、常に言っていました。でも、周りはいっさい変わりませんでしたし、どちらかといえば煙たがられていましたね(笑)。逆に、そういうことを言わなくなって、僕自身がいろんなことに挑戦することで、周りの友だちも「俺もやってみようかな」と動いてくれることに気がつきました。そんな経験から、今は「押しつけるのはやめよう。ただし、提案することはしよう」と考えるようになりました。

ですから「木づかい生活応援団」としての活動も、理屈を並べるのではなく、実際に木で出来たものを使ったり、ログハウスを建てることで、毎日楽しく幸せに暮らしている僕の姿で表現していきたいと思っています。そういった姿を見てもらうことで、皆さんに木を使うことの素晴らしさに気づいていただければ嬉しいですね。

トゥ・ドゥではなくトゥ・ラブな活動であってほしい

現在は、お金やモノで幸せを感じる価値観が世界中に蔓延しています。でも今の経済危機をきっかけに、「自然の秩序を保って生きることが本来の幸せなんだ」という価値観にパラダイムシフトしていくような気がしています。実際に「地球が僕らのものではなく、僕らが地球のものだ」という謙虚な姿勢を持つことが大切だと多くの人が感じているからこそ、森づくり活動や、もっと木を使おうという活動をしている人たちが、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

そういう活動をしている皆さんは、「自分たちのやっている活動に意味があるのだろうか」と考えることもあるかもしれません。例え小さな活動であったとしても、その活動を継続していくことによって、バタフライ理論ではありませんが、いつかきっと大きく広がっていくはずだと信じています。

とはいえ、トゥ・ドゥ・リストのような「やらなければならない」という活動では、継続していくことはできません。自分がやっていて楽しみや喜びを感じないような活動を続けていても、結局効果は出ないままでしょう。そうではなく、トゥ・ラブ・リストとでもいいますか、皆さんの活動は、自分がやっていて楽しいことであってほしいと思います。そういうポジティブアプローチこそが、世の中を変えていくのではないでしょうか。僕も、そんな皆さんと一緒に頑張っていきたいと思っています。

※ 『ぐりーん・もあ 45号(2009 春)』(国土緑化推進機構 発行)から引用しました。