森づくりインタビュー - 大久保 尚武さん

「森づくり」について各界の著名な方に語っていただきました。

日本経団連自然保護協議会大久保尚武会長に、企業の森づくりへの期待を語ってもらいました。

「企業の森づくりへの期待」

大久保 尚武さん

日本経団連自然保護協議会 前会長

1940年生まれ。1962年東京大学法学部卒。同年8月積水化学工業株式会社入社。1989年取締役就任。1994年常務取締役就任。1997年専務取締役就任。1999年取締役副社長就任。同年6月から代表取締役社長就任。2003年11月藍綬褒章受章。

地球環境時代における森林

近年、地球環境問題、特に地球温暖化や生物多様性保全の問題は企業活動にとっても大変重要なものとして認識され、関心が高まっております。企業の地球温暖化防止対策は社会的に定着しつつあり、さらに国連の生物多様性条約締約国会議での決議も踏まえて、昨年に策定された『第三次生物多様性国家戦略』において、企業が生物多様性保全においても大きな役割を果たすことが期待されております。

そのような中、日本経団連自然保護協議会におきましても、生物多様性保全に関する取り組みを2007年度の重点活動と位置付け、本業との関わりなどについての議論を重ねて参りました。「森林」や「水」とのかかわりは重要な事項といえ、企業は「森林」や「水」をはじめとした「生態系からの恩恵」を享受し、またその恩恵に支えられながら事業活動を行っているとの認識も広がりつつあります。

近年広がりをみせている企業による森づくり活動は、生物多様性の保全など次世代に健やかな地球環境を引き継ぐことに貢献することができます。また、実際に植林や間伐といった作業に参加することで、緑豊かな森林が育まれていく姿を見ることができ、また植樹本数や面積、二酸化炭素吸収量などを定量化しやすいといった特徴があります。

森づくりは企業が行う環境保全活動の中でも、多様なステークホルダーにとっても分かりやすく、その位置付けを明確化しやすいものであると感じています。

さらに、地域に根付いた工場や事業所を持つ企業にとっては、地域と連携して森づくりに取り組むことで、その地域とのつながりを強くすることもできると思っております。

企業と地域を繋ぐ充実したサポート制度・体制

しかしながら、森づくり活動は専門性が高いことから、企業が単独で取組むのは難しく、実施にあたっては地元NPO、森林組合などの専門家との協働が重要となります。

その中、現在各地の都道府県で、企業とNPOや森林組合、地元行政、そして森林所有者や地域集落等を仲立ちする制度が設けられています。この制度の活用を通して、企業は環境保全活動に貢献できるだけでなく、従業員の環境教育や憩いの場として活用でき、地元の人たちとの交流も好評で、地域活性化にも繋がっているなど、非常に意義深い取組であると感じています。

今後さらにサポート体制として「森づくりコミッション」の設立がはじまっていく中で、企業が森づくりに参加しやすい環境が整えられて、取組が広まっていくことでしょう。

これからの「企業の森づくり」への期待

日本人は、古くより建築資材やエネルギー源などとして活用する中で、森林とうまく付き合い、森林を愛する文化を持っていました。しかし、近年の生活スタイルの変化により森林と人々が遠い存在になってしまい、そのために森林の問題にも目が向かなくなってしまったのだと思います。

その様な観点から、森づくり体験活動などを通して、次世代を担う子どもたちや従業員などのより多くの方々が森林に親しみを抱き、関心を持つことで、社会全体で支えていこうという意識が醸成されることが大事だと思います。

そして、持続可能な森林管理に繋がる取組へと発展させていくことが大事であり、多様な企業が多様な形で森づくりに参加して、技術やノウハウ、システムを活用することで、新たな間伐材や地域材の利用に繋げ、林業や山村の活性化まで視野を広げていけると良いと考えています。それによって、永続的に社会全体で森林を維持管理していくシステムの構築に繋がっていくのではないでしょうか。

この様に、人づくりや地域づくり、そして社会システムづくりという視点も含めて森づくりを捉えていけば、企業は森林に対して様々な取組に参加することができるのではないかと思います。様々な企業が多様な形態で森づくりに取り組むことで、日本および世界における持続可能な循環型社会の実現に向かっていくことを期待しています。

日本経団連自然保護協議会の歩み

日本経団連自然保護協議会ならびに自然保護基金(KNCF)は、リオデジャネイロで国連環境開発会議(地球環境サミット)が開催された1992年に設立され、基金への募金活動支援のほか、企業の自然保護活動の啓発・普及、NGOとの協働の促進などを中心に活動を積み重ねてきました。2003年には設立10周年を記念して『日本経団連自然保護宣言』を発表し、自然界と経済社会の共存を宣言するとともに、その行動指針の具体化を図って参りました。そして、2007年には設立15周年の記念誌『Beyond the Border ~企業とNGOのパートナーシップで築く地球環境の未来~』をとりまとめ、これを機にこれまで以上に『自然界と共栄できる経済社会』の実現に向けて努めてまいりたいと思っているところです。

※ 『企業の森づくりブックレット』(国土緑化推進機構 発行)から引用しました。