森づくりインタビュー - 北島 三郎さん

「森づくり」について各界の著名な方に語っていただきました。

今年でデビューから46年目を迎える北島三郎さん。言わずとしれた演歌界の大御所には、 『与作』『年輪』『山』『北の大地』『根っこ』など大地や森林をテーマにした歌が多く、テレビ番組『サブちゃんと歌仲間』を通して「国民参加の森林づくり運動」の応援もいただいている。今回はそんな北島さんに、みどりや森林への想いをうかがいました。

「大地とみどりへの感謝を忘れないでほしい」

北島 三郎さん

歌手

1936年北海道生まれ。1955年、高校卒業と同時に歌手を目指して上京。1962年、『ブンガチャ節』(日本コロンビア)でデビューする。以後、演歌ひとすじでヒット曲は多数。役者としても舞台公演やテレビ時代劇などに出演し、高い評価を受けている。海外公演も多く、日本人の心の伝道師として国際交流にも貢献している。

優しい故郷を持っている幸せ

私が生まれ育ったのは、函館の西にある知内というところ。当時は村でしたが、今では町になりました。目の前には津軽海峡、後ろを振り向くと大千軒岳という立派な山がある、野山に囲まれた半農半漁の村でした。子供の頃は、そんな大地があって緑に囲まれた故郷で、いつでも裸足になって、毎日泥だらけになって遊んでいました。

最近は故郷に帰ると、なぜか、すぐ眠くなるんですよ。私は故郷を片時も忘れたことはありませんが、出ていった時には一度、故郷を捨てたわけです。それでも、故郷の山や川や海はほとんど変わらずにいてくれて、「お前、都会で埃だらけの空気のまずいところで頑張っているんだから、故郷に来たときにはゆっくり休め」と迎えてくれているようでね。それが故郷の優しさなんです。そんな故郷をもっている自分は幸せです。

大地と緑に感謝する歌を歌っていきたい

interview-kitajimaこうして都会の風景を眺めてみると、すばらしいビルもいいのですが、多くの人が、大地と宇宙との間の空間でフワフワ生活している。よく平気でいられるなと思います。私自身も、家を出たらすぐに車に乗りますし、仕事場もビルの何階かだったりして、ほとんど大地に足を着けないこともあります。そんな時は、今暮らしている家の庭を、裸足で歩くんですよ。今年で71歳になりますが、歳を重ねるほど、本当に大地の素晴らしさを感じます。

雑草や木々の緑と同じように、私たちも大地から、命あるものとして生まれてきているのです。そういう大事なことを忘れてはいけないですよね。だからこそ人間は、緑の大地にちゃんと足を踏まえて歩かなければダメなんじゃないかと思います。『根っこ』という歌は、それを歌っているんですよ。上ばかり見ていてはダメで、支えているのは大地に張った根っこなんだと。大企業のオーナーの様な人にも、必ず根っこがあるんです。会社の枝っぷりがよくなって豊かな実がなるようになっても、大きくなればなるほど風当たりは強くなる。そんなときに頑張って支えているのは、大地の中の根っこなんですね。

そんな大地から生まれてくる雑草が、すなわち演歌かなと思います。山あり谷あり、そして川あり海あり、ときには裏町があり、いろんなところで踏まれても頑張りながら雑草は生きているじゃないですか。演歌にはそういう歌が多いんですよ。それはつまり、生活の歌なんですね。山で働く人には山の歌、海には外国航路の歌もあれば、汗を流して網を引く歌もある。ネオンの裏町の歌もある。すべて生活にかかわっているのが演歌なんです。そのなかでも、私は緑が大好きですから、山で頑張って木を育てて伐っている人、あるいは土埃のなかで畑を耕している人たちの歌を歌っていきたい、そして、日本という国を守ってくれている緑に感謝をする歌を歌っていきたい、と考えています。

ボランティアで頑張っている人に感動

「えん歌」の「えん」には、いろんな字が当てられます。一般的な演じるの「演」もあれば、怨みの「怨」もある。私の場合は、艶っぽさの「艶歌」ですね。歌い手として、皆さんに聴いてもらうためには、やはり艶がないとダメなんです。野球のピッチャーだって、ものすごいストレートを持っていても、それだけでは通用しない。そこに変化球を交えることで、皆さんが「おっ」と感じてくれるわけです。歌の場合は、それが艶っぽさなんですね。「国民参加の森林づくり」のような運動でも、それは同じだと思います。森林の大切さ、緑の尊さを言葉で訴えるだけでは、なかなか伝わらないでしょう。たとえ家の中の、ほんの小さな緑でもいいから、やはり実際に緑に触れてもらうという体験が必要ではないかと思います。

1988年に皆さんに歌詞を募集してつくった『年輪』のカップリングに、『三郎杉』という歌があります。その時、家の庭にスギの苗を植えたのですが、この三郎杉、今では本当に大きくなりました。見るたびに「緑って素晴らしいな」って思いますね。また、庭にはトマトとピーマンの苗を植えているのですが、だんだんと葉が出て実がなるのが、すごく楽しいんですよ。

実際にボランティアで森林づくりを行っている人たちが増えていると聞きます。私もそういった活動はおおいに賛成ですし、その人たちにはまず「ありがとう」といいたいですね。森林づくりに限らず、ボランティア精神を持って一生懸命活動をしている人たちを見ると、いつも「すごいなあ」と感動してしまいます。

ただ私も、感動しているだけではいかんな、と。できるだけ私も皆さんと同じ気持ちで、気がついたら緑を植えながら、大地のありがたさと緑がスクスク育っていく姿を確かめながら頑張っていきたいなと思いますので、皆さんひとつ、大いによろしくお願いいたします!

※『ぐりーん・もあ 37号(2007 初春)』(国土緑化推進機構 発行)から引用しました。