森づくりインタビュー - 青山 佳世さん

「森づくり」について各界の著名な方に語っていただきました。

NHKのおはよう日本「季節の旅」のリポーターとして、5年間で226カ所を旅したという青山佳世さん。その後の取材や講演も入れると、全国で約800カ所にもなるという。まさに旅のプロであり、林政審議委員や観光立国懇談会委員長なども歴任されている。そんな青山さんに、みどりや森林に対する想いをうかがいました

「地域の魅力の源は、そこに暮らす人の元気
山村にも観光的な視点をもってほしい」

青山 佳世さん

フリーアナウンサー・林政審議委員

愛知県生まれ。商社勤務からフリーアナウンサー。平成元年からNHKの生活情報番組や報道番組を担当し、おはよう日本「季節の旅」では5年間、226カ所を旅する。これまで国土交通省交通政策審議会委員、観光立国懇談会委員、中央防災会議専門委員、林野庁林政審議会委員、バイオマス日本総合戦略アドバイザーグループ委員などを歴任。著書に『旅で見つけた宝物』。

森林を意識するきっかけは旅番組

私は愛知県豊橋市で生まれて、小学校1年生から名古屋市に移りました。どちらも駅の近くで、まさに街中に暮らしていましたので、森林や自然に関わることは全くありませんでした。成人になっても「森林はいろいろな機能があって大切だから、木は伐ってはいけないもの」と思うような、典型的な都会人の感覚でしたね。

そんな私が森林を意識するようになったのは、関東甲信越エリアの、いわゆる観光名所ではないところを旅して歩き、その土地の暮らしぶりや魅力を伝えていくというNHKの旅番組での経験がきっかけでした。

取材で埼玉県の中津渓谷に行ったとき、かつては林業経営者で現在は民宿を営んでいる方に山を案内してもらい、とっておきの湧き水に連れて行っていただきました。レポーターにとって、水の味って表現が難しいんですよ。その方はなんと言うのかと思っていたら、「いつもは喉にまろやかな水なんだけれど、今日は味が違うな。山の上で何かがあると、水の味にも違いが出てくるんだよ」って。その話を聞いたその瞬間、「いつも山の顔を見ている人がいるから森林や水が守られていたんだ」ということが、理解できた気がします。

ちょうど5〜6年前でしょうか、森林ボランティア活動を取材したこともありました。マスコミ的には参加者の方から、例えば「日本の森林を守るために」「温暖化防止に貢献したい」といった明確なコンセプトが返ってくるのかなと、期待していたんです。ところが皆さんからは「緑の中で汗を流すと気持ちがいい」「仲間ができて楽しい」という声ばかり。使命感というよりも、自分たちの楽しみが結果的に森林のためになればいいんだということが、よく分かりました。「都会の人に励まされてやる気になりました」という山主さんの声も聞きましたので、こういうことが都市と山村との良い関係なのかな、とも感じましたね。

林業は長く厳しい状況に置かれていましたが、最近は地球環境保全、外材が入りにくい状況などもあって、国産材の活用に目が向けられています。この時期にぜひ林業の再生に向かってほしいものです。

人々の暮らしや生業も観光資源

interview-aoyama私たちにとって森林は気持ちのよいものであり、これまではそれを無料で享受させてもらってきました。これからの山村は、そういう森林の機能による経済的効果を求めていってもよいのではないでしょうか。そういう意味でも山村の方たちにはぜひ、観光的な視点を持っていただきたいですね。観光とは、もともと中国の易経に出てくる「国の光を観る」という言葉です。つまり地域の元気とか宝を見せていただくということなんです。ですから、人々の暮らしとか生業の部分も大きな観光の資源のひとつです。「他の産業がダメになったから観光で」という考え方は大きな間違い。その地域そもそもの業がしっかりしていなければ、その地を訪れた人にも魅力的には映りません。

最近、森林セラピーの取り組みが動き始めていますが、とても期待できる活動だと思っています。昔の湯治のように心の癒しとか体の健康、病気の回復まで、幅広い意味での森林の効果に付加価値をキチンとつけ、経済効果も含めて位置づけていくことは、とても大事だと思います。森林セラピーに取り組む地域にお願いしたいのは、宿泊や食事など、森林だけでなく全体として癒されるような配慮をしてほしいということです。それこそが地域の魅力なんですね。素朴でも洗練された質の高いものを目指してほしいと思います。

元気な森林・想いのこもった森林

少し前までの森林づくり運動は、個別の森林ボランティア団体が自分たちの意思でそれぞれ頑張っていて、それを国土緑化推進機構などがサポートする形でした。でもそれでは、作業が進むうちにメンバーが固定化してしまったり、活動がマンネリになってしまったりして、さらなる展開を図ることが難しかったように思います。最近は、活動している人数も内容も上手く広がっている感じがしますね。技術が熟練した人たちは仕事として森林づくりに参加できる、森林作業で汗をかくのはちょっと無理という人は木を使うという形での参加もできるといった仕組みが整備されてきていますし、地方自治体などでもそういう活動をトータルでサポートしていくようになっているようで、とても嬉しく思います。

これからは、ただ単に美しい森林をつくるだけではなく、元気な森林をつくっていってほしいです。造作が美しくても魅力的ではない人っていますよね。でも、内面がきれいで元気な人は、本当に豊かで美しいじゃないですか。森林も同じだと思います。

それと、これからの森林は人の想いのこもったものであってほしいと思います。それは、企業の皆さんにとっての社会貢献の場としての森林でもいいし、子供たちのための教育的な森林であってもいいのです。私もいま、佐渡で「鬼太鼓の森づくり」に参画して、「この木がいずれ和太鼓になるんだ」という夢を持って森林を育てています。

※ 『ぐりーん・もあ 39号(2007 秋)』(国土緑化推進機構 発行)から引用しました。