ピジョン株式会社~育児と育樹こころは同じ~20年以上継続している「ピジョン赤ちゃん誕生記念 育樹キャンペーン」~
植樹式での集合写真

赤ちゃん誕生の記念植樹

 「ピジョンという会社を知っている人は年齢・男女別ではどれくらいいるのだろうか?」。1985年、ピジョンが「愛」を企業理念としたCI システムを導入することがきっかけに、このような素朴な疑問に対しての調査を実施した。これまでの育児用品中心の会社から、手助けを必要とするすべての人々に「愛」を商品とサービスにかえて提供する企業へと変貌するために、必要な調査だったのである。
 調査結果は、当然のことながら赤ちゃんが誕生する前の男女では認知度は低く、誕生後は飛躍的に伸びていた。しかし、赤ちゃんが誕生してピジョン商品をご愛用いただく期間は、長くて2年。その後ピジョン商品と再び出会うのは、自分が赤ちゃんを持つ25~ 30年後となる。
 企業理念に「愛」を掲げ、「かけがえのない命を大きく、たくましく育てたい」という当社の考え方を、多くの方々に、しかも長い間理解いただくにはどのようなキャンペーンが相応しいのか。そのことを模索していた当時の社長(現最高顧問)は、赤ちゃん誕生という感動や喜びと、木を育てて環境づくりに貢献する喜びは共有できると考え、「育児と育樹、心は同じ」のスローガンのもとに「赤ちゃん誕生記念育樹キャンペーン」を1987年にスタートさせた。

   「赤ちゃん誕生記念育樹
キャンペーン」のロゴ

育樹地の様子(植樹後3年目の森林)

 考え方は決まったが、さて、どこに木をどのように植えるか。最初は日本人にとって象徴的な存在の富士山の麓こそ植樹場所として最適だと考えたが、当時は植える場所がなかった。そこで林野庁に相談したところ、「分収造林制度を利用すれば」とのアドバイスを受け、茨城県常陸大宮市(旧那珂郡美和村)の国有林に「ピジョンの森」として植樹を行うこととなった。
 開始当初は「育児用品の会社がなんで植林なんかに参画するの?」「いったいいつまで続けるの?」という意見も社内から聞こえたが、「継続こそ力なり。ここで止めたならこれまでやってきたことが無駄になる」との社長の一喝もあり、現在に至るまで20年以上、毎年植樹を行っている。

これまで約8万5千本を植樹

 現在、生まれてくる赤ちゃんの数は年間110万人程度。「赤ちゃん誕生記念育樹キャンペーン」に参加いただく赤ちゃんの数は年平均3,500 ~ 5,000 名と、全体の0.3%程度である。毎年約1万2,000~1万5,000人の応募をいただいているが、どうしても植えられる木の本数には制限があり、残念ながら抽選とさせていただいている。
 当選した方には、当社から赤ちゃんの名前と生年月日を記した絵葉書付きの記念証明書と育樹地を記したマップをプレゼントしてきたが、2007年からは『木製はがき』を製作し、これを当選通知『美和の森から届く木のおたより』として、当選者の方に送っている。これまでに植樹してきた苗木の数は約8万5千本となっている。
 当選した赤ちゃんは全国に及ぶため、関東地方のご家族50~100家族に限定して、毎年5月中旬の土曜日に植樹式を実施している。赤ちゃんを抱いた母親に促されて、お父さんのクワを持つ手に力が入り、しっかりと根の回りの土を踏んでいく光景は感動ものである。きっと夫婦で植えた木とわが子の成長を重ね合わせているのだろう。
 育樹地内のログハウスに、参加者全員のお子様の名前を記した名簿を設置しているが、わが子の名前を見つけたときは歓声もあがっている。また、実際の植樹以外にも楽しんでいただこうと地元ならではのイベントも開催している。この日は社員も応援に加わり、記念写真の撮影や商品説明など、参加者とのコミュニケーションを深めることに努めている。
2007年から植樹している『ピジョン美和の森』内拠点
「すくすくハウス」

地元との協力の上に成り立つ森林づくり

 このキャンペーンは、地元婦人部の方の手打ちそば講習、役場スタッフの方々の応援、交通安全協会の交通整理等々、地域の皆様や行政の応援なくして成り立たない。
 また、植樹は数日で終了するが、その後の下草刈、枝打ち、間伐、除伐、主伐作業といった50~ 60年にもおよぶ木の手入れについては、活動を始めて以来、美和木材協同組合にお願いしている。
 長期間にわたるこれらの作業は並大抵ではなく、林業に携わる方々の高齢化も懸念されるが、幸いなことに同組合には毎年高校、大学の新卒者が入社しており、当社としても頼もしく、かつ安心感を覚えている。

「美和の森ファミリーフェスティバル」での
そば打ち講習

 このキャンペーンが、同組合に若者が就職してくれる一助になっているかもしれないと考えると嬉しい。
 思い返せば、これまでのこの活動は、けっして順風満帆ではなかった。開始から3年間は当社独自で行ってきたが、企業だけでは継続できないという壁に突き当たった。そこで当時の美和村企画課に協力をお願いしたが、最初は「一企業の応援はできない」といった回答が返ってきた。当社としてはこの育樹キャンペーンを一過性で終わらせる考えはなく、長期にわたって継続して美和村に木を植え続けたいこと、そのためには村民の皆様の協力なくしてはできないことを、何度も足を運んで訴えた。

 やがて当社の熱い考えを役場にもご理解いただき、第5回からは、美和村との共催で植樹者と、地元の方々の交流イベント「美和の森ファミリーフェスティバル」を開催することとなった。バーベキュー、フィッシング、ぬいぐるみ人形劇、手づくりゲーム、手打ちそば教室等を催し、植樹参加者には終日楽しんでいただいた。
 さらにキャンペーン参加者を募って「ファミール会」の名称で会員組織をつくり、地元で採れた野菜や果物などを入れたふるさと宅配、ファミリンピック(運動会)、サマーフェスタ、シイタケの種駒打ち体験教室、餅つき大会等も開催し、家族で楽しんでいただいた。
 この共催イベントは10年間続けられた。このようなイベントは当社と行政、地元村民の方々とのコミュニケーションづくりに大いに役立ったと考えている。

ファミリンピックの様子

 第10回では、1回から9回までの、また、第20回では、1・5・10・15 回の参加代表家族を招待し、式典で挨拶をしていただいた。子どもの成長を目の当たりにして、まさしく継続こそ力なりと感じた。
 山火事も3度経験した。幸い大きな惨事に至らなかったが、長期にわたる育樹による緑の財産も、一瞬にして消失してしまうリスクがあることを味わった。

CSR活動としてのアピール

 同キャンペーンを始めた1987年頃は企業のメセナ活動が最盛期を迎えており、どの企業も経常利益の数%をさまざまな形でメセナ活動に費やしていたが、その後バブルがはじけ、業績の低迷とともにメセナ活動も後退し、企業は本業の利益を上げることに精一杯となっていった。当社は、そのような時期にあっても「育児と育樹こころは同じ」のスローガンのもとに、同キャンペーンを継続させてきた。
 同キャンペーンは、純粋に赤ちゃんの成長と木の生長を見守るというキャンペーンのため、CSR という観点からは積極的にアピールしてこなかった。しかし、環境に対する企業の意識が高まってきたことや、CSR への考え方を環境報告書やホームページに開示する企業が多くなってきたことから、当社も20年以上にわたる同キャンペーンの軌跡と今後の展開などをきちんと伝え、すべてのステークホルダーにご理解いただくことこそが重要と考え、ホームページ内にCSR サイトを立ち上げている。
 この育樹キャンペーンに参加いただいた方々は全国に及ぶため、育樹地にはなかなか訪れることができないが、わが子の誕生記念に植えた木の生長をぜひ見たいと思う方は多いはず。そこでこのサイトでは、お子様の生まれた年、もしくは参加いただいた回を入力すれば育樹地の場所と木の生長が画像で見られるようになっている。

ピジョンの森を日本一美しい森林に

 第20回までは分収造林制度のもとで常陸大宮市(旧美和村)の国有林にスギ・ヒノキを植えてきたが、そろそろ植えられる場所がなくなってきた。さて今後どうしようということになったが、同じ旧美和地区でゴルフ場予定地を手に入れることができた。この土地は長年開業されずに放置されており、地元の方々は産業廃棄物業者の手に渡ることだけは避けたかったようで、当社の所有となったことで安堵したようである。
記念植樹の様子
 この土地はかなり荒廃しており、今後この土地で永きにわたって植樹をしていくためには、植樹の長期構想を作成する必要があった。また、これまでの国有林はスギ・ヒノキの経済林としての制約があったが、この土地には広葉樹を植えることもできるため、季節の変化を感じ取れる森林と、参加者のご家族がいつでもやってきて水遊びができる小川を確保したいと考え、地質、土木、環境、生物、林業などの専門家から美しい森林づくりのためのアドバイスをいただいた。近い将来、ホタルが成育できるような小川にする準備も始めている。同キャンペーンに参加したご家族がこの地を訪れ、自然と溶け込んでいる光景を期待しながら、今後も整備を続けていきたい。

 一方、これまで20年間植えてきた国有林は、いよいよ間伐の時期を迎える。ここで課題となるのが間伐材の利用であるが、20年前に植えた木の間伐材は、キャンペーン当選者の方へお送りする『木製手紙』などに利用していきたいと考えている。今後は国有林に植えた木は長期にわたって生長を見守っていくが、その間に発生する間伐材は無駄のないように有効利用していきたい。
間伐材を利用したメッセージボード
2007年から植樹を開始した私有地は90haという広大な土地のため、何十年にわたっての植樹が可能だ。地球の温暖化が叫ばれている昨今、当社が植える木は地球全体からすればわずかではあるが、少しでも二酸化炭素の削減、温暖化防止に協力していきたい。そして、自然を活かしながら手を掛け、日本一美しい森林にしていきたいと考えている。
 最後に、CSRの考え方を的確に表現した言葉があるので紹介したい。1961年、第35代アメリカ大統領に就任したジョン・F・ケネディの就任演説の一節だ。
 「同胞のアメリカ人よ。あなたの国家があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたがあなたの国家のために何ができるかを問おうではないか。わが同胞の世界の市民よ。アメリカがあなたのために何をしてくれるかではなく、われわれと共に人類の自由のために何ができるかを問おうではないか」
 この言葉は、企業に置き換えても、家族に置き換えても通じる言葉だと思う。見返りを期待しない自主的な行動こそ、CSR に相応しい。

お問い合わせ

ピジョン株式会社 経営企画本部 IR・広報室
TEL:03-3661-4200(代)
E-MAIL:kikaku@pigeon.co.jp
URL:http://www.pigeon.co.jp/csr/ikuju/index.html